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「キムにチャンスはほぼない…でも」井上尚弥の挑戦者“ナゾの韓国人ボクサー”の素顔を知るモロニーが証言「代役として最高の相手だよ」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byJIJI PRESS

posted2025/01/22 11:00

「キムにチャンスはほぼない…でも」井上尚弥の挑戦者“ナゾの韓国人ボクサー”の素顔を知るモロニーが証言「代役として最高の相手だよ」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

井上尚弥戦を控えるキム・イェジュン(32歳)。過去、日本人選手に7戦全勝の成績を残している

 スパーリングで会った時、キムには“パックウェザー”というニックネームが付けられている話は知りませんでした。マニー・パッキャオ、フロイド・メイウェザーというボクサーとしてのタイプもまったく異なる2人のスーパースターを融合させたのだから、面白い愛称ですね。とてもユニークなニックネームですが、その重積を担うのは大変なことじゃないかと気になってしまいます(笑)。

 キムは会話ができるだけの英語力があり、スパーリングの後で少し話をしました。私が日本で那須川と戦うことを知っていて、「君なら天心に勝てると思うよ」と言ってくれました。ナイスガイでしたね。先ほども言ったように、彼とはいいスパーリングができたので、「また何ラウンドかやろう」と伝えました。

「イノウエにパートナーを盗まれた(笑)」

 そこでキムは1月24日、井上のタイトル戦のアンダーカードで試合をする予定だと聞いたのです。「もしもグッドマンに何かあったら私が代役として井上と戦う」とも知らされ、すごい話だ、と思いましたよ。でもその段階では、私はサムにこれ以上何かが起きるとは思っておらず、試合は大丈夫だろうと考えていました。

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 ところがそのスパーリングの2日後、サムがまた左目をカットし、キムが代役挑戦者になったというニュースが流れて仰天させられました。それでも私はもう一度、キムとのスパーリングを組もうと手配したのですが、彼はもう韓国へ向かっており、叶わなかったのです。思いもよらぬクレイジーな流れで、私は井上にスパーリングパートナーを盗まれてしまったというわけです(笑)。

 このような形で世界タイトル挑戦の機会を手にしたキムはとても幸運だと思います。とても難しい仕事であるのは間違いないですが、井上との対戦は軽量級のボクサーにとって最大のステージであり、一生に一度のチャンス。何でも起こり得るのがボクシングであり、キムは全力を尽くして戦うという確信があります。

【次ページ】 「チャンスはほぼない」が「打ち合いが最善策」

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#キム・イェジュン
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