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佐藤天彦「振り飛車転向の貴族が抱くAI全盛時代への危惧」

posted2024/12/26 09:00

 
佐藤天彦「振り飛車転向の貴族が抱くAI全盛時代への危惧」<Number Web> photograph by Asahi Shimbun

text by

大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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photograph by

Asahi Shimbun

 スタイルの冒険――。

 ノンフィクション作家・沢木耕太郎の著書の帯にこのフレーズが躍っていたことを記憶している。まさに惹句だが、勝負の世界でこれを成功させるのは簡単ではない。一時代を築いた者にとってはなおさらだ。

 2016年から'18年に名人戦で3連覇を果たした佐藤天彦九段(36)は長らく居飛車党だった。棋界で最も長い伝統を誇るタイトルを3期獲得する原動力となった指し方だったが、'22年頃から佐藤は試行錯誤を始め、'23年秋には振り飛車一辺倒になった。

 相居飛車はその名の通り、飛車を初形に据え置いて戦う作戦だ。互いの飛車が睨みを利かせる筋に自玉を囲いがちなので序盤から緊張感をはらんでおり、一手一手が厳密になる。そのため自分の棋風を出すことが難しく、AI(人工知能)で調べた変化手順と評価値を幅広く記憶することが大事だ。

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