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「大谷翔平は前日、本調子ではなかったが…」番記者が見た“テレビに映らない50-50”伝説の舞台ウラ「大谷が打席に…ファンの歓声で雷鳴すら」
text by
柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byAP/AFLO
posted2024/12/22 17:01
前人未到の50-50達成に加えて「6安打3本塁打10打点2盗塁」。大谷翔平が金字塔を打ち立てた伝説の1日を、番記者視点で振り返る
翌18日、2戦目の初回。先頭で左前打を放った大谷は、続くムーキー・ベッツの初球で二塁を果敢に狙った。珍しくスタートが遅れたが、捕手ニック・フォーテスの送球がそれ、49盗塁目に成功。あと「2-1」に迫った。
「記者2人体制」でこの3連戦を取材していた私は同僚からの報告を聞いて驚いた。先発左腕ライアン・ウェザースは「人生で初めてクイックモーションで投げた。急いで投げようとしてうまく球を握れなかった」と悔やんでいたというのだ。
メジャーでは盗塁阻止は捕手に任せるケースが多く、大谷が'18年にエンゼルスに移籍した際も捕手マーティン・マルドナドから「そんなにクイックモーションで投げないでくれ。走らせるくらいの感じでも本当に刺すから」と伝えられていたという。投手目線も持っている大谷からすれば、ウェザースのクイックモーションが“付け焼き刃”だったことはすぐに分かったのだろう。
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ただ、この日の大谷の取材対応はなし。その同僚記者の報告によれば、盗塁を許した捕手フォーテスは多数の日本メディアに囲まれ、不快感を示していたという。取材者それぞれ立場が異なり、いまだ混迷している大谷の取材現場。前人未到の「50-50」を前に、報道陣にはピリついた雰囲気も漂っていた。
大谷が打席に…スコールや雷鳴を打ち消す大歓声が
19日の3戦目。試合開始は午後4時40分。開閉式ドーム球場のローンデポ・パークの屋根や窓にフロリダ特有の激しい雨が打ちつけていた。初回。先頭の大谷が打席に向かうと、スコールの雨音や雷鳴さえも打ち消すような大歓声が響いた。
右腕エドワード・カブレラから右中間フェンス直撃の二塁打でいきなり出塁。1死一、二塁となり、一塁走者フレディ・フリーマンと重盗を敢行した。右足からのスライディングで三塁手のタッチをかいくぐり、手を叩く。
「盗塁もいけたら積極的にいくという感じ。そういう意味では良い盗塁だった」
日本選手では'01年イチロー以来、23年ぶり2人目の50盗塁に到達。勢いは止まらず、2回2死一、二塁では右前適時打を放つと、直後に二盗に成功。51盗塁。7月22日を最後に失敗がなく、28連続盗塁成功で成功率を92.7%まで上げた。どよめきが止まらないローンデポ・パーク。いつの間にか、スコールは止んでいた。
しかし、それはまだ“伝説の一日”の始まりに過ぎなかった。
〈つづく〉