「その年、俺は最多勝とったんだけど夏には、ダイエーからなんの交渉もなかったよ。そのときはFAが今ほど活発じゃなかったし、俺も記者から『今年FAですね』って言われて知ったくらいだったけど。それで最初に電話をくれたのが、当時中日の監督をしてた星野仙一さんだったんだよ」

　星野氏は武田氏にとっては、明治の大先輩だ。

1998年11月、ダイエーから中日に移籍した武田一浩氏。入団会見で星野仙一監督と握手　©Sankei Shimbun

「星野さんは第一声で『お前FAだろ。いいから来い』だったからね。そっから、『お前、中日しかないだろ？』っていう明治OBの圧力がすごいわけ。最終的な条件はダイエーのほうがよかったし、巨人からもオファーが来て長嶋茂雄さんと3回飯も食ったよ。でも、俺のFAは学閥で決まったね」

　仁義を重んじる傾向の強い野球界だが、令和のプロ野球はその様相を変えるのだろうか。

＜前編《田中将大》編から続く＞