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「渡邊雄太は泣き言を一度も言わなかった」NBA記者が見守った壮絶な11年間…ファンや家族の想像を遥かに超えた「清々しい終止符」
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byUSA TODAY Sports/Reuters/AFLO
posted2024/04/24 11:02
NBAデビューから6シーズンにわたってプレーした渡邊雄太(29歳)
プレップ時代、自分では到底かなわないと思うような能力の選手を目の前にしたときや大学でキャプテンとしてチームを勝たせられなかったときも、壁は感じたが、それで心折れることはなかった。大学卒業後にNBAに入った後も、ドラフト外から、いつカットされるかわからないような保証のない契約で、出場時間がない試合が続くような崖っぷちを常に走ってきた。
困難は山ほどあったが、その目は常に前を見ていた。どんなに苦しいときでも「自信はあります」という姿勢だけは崩れることはなかった。
厳しいNBA生活を支えてきた“自己暗示”
今年1月、フェニックス・サンズで出場時間がもらえない中で奮闘していた渡邊に、その自信がどこからきているのかと聞いてみた。その時に渡邊が語った言葉には、この6年間の苦難と、その中で彼を支えてきたものが凝縮されていた。
「自分に言い聞かせてる部分もありますね。自己暗示みたいなのもすごい大事だと思ってるんで。自分に自信がないかもって思いだしたら、多分、ずっと負の方向に行っちゃうような気がするんで。実際、今までの経験上、こういうのを乗り越えてきたっていうのもありますし、自分自身に対して自信を持ってやり続けようっていう意味も込めてというか。本当に自己暗示みたいな部分も、50%/50%ぐらいであります」
今回、渡邊が語った「多分僕の限界は、本当はもっともっと前にあったんだと思います」という言葉を聞いた後にこのときのコメントを思い返すと、「自己暗示」という言葉がさらに重く響く。