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「昔から見えてた」なぜ堀江翔太はいつも冷静なのか? 観察眼とチューニング力…原点は高校時代「キック処理やってた。エイトやのに(笑)」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/04/05 11:01
今シーズン限りでの現役引退を表明した堀江翔太(38歳)
堀江は啓光学園(現・常翔啓光学園)高校へ進学できたらいいと考えていたが、実際の進学先は大阪府立の島本高校だった。かつて中川家が島本高のジャージを紹介していて、左胸のエンブレムが「般若」だったので、びっくりした。堀江いわく「あれね。あれ、いかついでしょ。なんであれになったんかな」と笑っていた。
島本高は私立と比べて選手層が厚いわけではないから、多角的な才能を持つ堀江はいろいろな役割を経験できた。いや、せざるを得なかった。
「フルバック的な役割だけじゃなく、エイトでスクラムの時は、スタンドオフ、第1センターのところで縦を突き、そのラックを3人で出したら、次のフェイズでは僕がスタンドオフの位置に入ってたんです。そこでパスか、ランか、それともキックなのか、僕がチョイスしてました。すごいでしょ(笑)。そこがベースになってるというかね。ラグビーを全体的に見るようになれたのは、高校時代からちゃいますかね」
堀江はメインのポジションはありつつも、様々なポジションを経験し、いろいろ知ることが重要ではないか、という。さらには、小学校時代のサッカー、中学でもバスケットボール(高校から勧誘が来るほどだったという)をプレーしていた経験がないまぜになって、いまの「堀江翔太」が存在している。
無傷の11連勝「一戦一戦を大切にして」
3月を終えて、ワイルドナイツは11連勝と無敵を誇る。後半の途中まで接戦だったとしても、堀江らのリザーブが投入されると、一気に勝負をつける。パナソニックの持ち味は総合力にあり、「本当に強い」チームだ。
レギュラーシーズンは5月4日に大分で行われる横浜キヤノンイーグルス戦まで続き、その後は準決勝、勝ち進めば決勝が待っている。このままいけば本命として準決勝を戦うことになるだろうが、堀江は先を見すぎないことも大切だという。
「去年もそんな感じだったんですよ。ずっと調子が良くて、でも、最後の最後に決勝でスピアーズにやられてしまって。今年も勝ち続けてますけど、どこかでつまずいてそこから崩れてしまう可能性もあるわけです。年長者の僕としては、まだ先はあることだし、いまの時点ではもうちょっとリラックスしてもええんかな……とは思います。先を見すぎるのもつらいからね。結局、どれだけ一戦一戦を大切にして戦っていくかということだと思います」