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「平日は16時から終電まで、休日は朝から12時間以上練習」…日大アメフト“最後の日本一QB”が語った勝利の理由「あの年、本当の敵だったのは…」
text by
北川直樹Naoki Kitagawa
photograph byNaoki Kitagawa
posted2024/02/18 11:04
廃部が決定した日大アメフト部が最後の日本一に輝いたのは2017年のこと。この年エースQBを務めたのは、まだ1年生の林大希だった
チームの本当の「敵」は…自軍の監督
リーグ優勝を決めたあとの法政大戦は僅差で落としたが、6勝1敗の関東1位で東日本代表決定戦に進み、東北大に勝って甲子園ボウル出場を決めた。このときも、対戦相手の関学大を強く意識する余裕はなかったという。
「『甲子園で勝つことで、来年の練習メニューが軽くなる』と思ったから全員が団結していた感じです。なんとかして監督の好きなように、されるがままにならんように。勝利への執念は関学大に対してではなく、監督に対してだったと思います」
いびつな極限状態のなかで、甲子園ボウルを迎えたこの年の日大。皮肉なことに、相手となった“常勝”関学大に対する緊張感は全くなかった。本当の「敵」はあくまで自軍の指揮官だったからだ。
ちなみに、関東と関西のフットボールには、具体的にどんな違いがあるのか。当時の感触を思い出してもらった。
「正直、スピードとか当たりの強さでいうと、関東も負けていないと思うんです。むしろこの2点については、法政や早稲田のほうが上だとすら感じました。でも、関学は老獪さがある。こちらがやろうとすることを、いなされるような感じです。好きなようにさせてくれない上手さがあるんです」
林の同期には1年生ながら主力に定着した選手が多くおり、ともにリーグ戦から活躍してきた。甲子園でも、日大のすべての得点に1年生が絡んだ。林本人は、当時の状況についてこう考えている。
「たとえば今、アメフトの世界で関西と関東のチームを比較したときに、基礎やフィジカルの差が論じられることが多いと思います。でもあの試合、関学をそこで上回ったという印象はないんです。活躍した選手には、1年生も多かったですし。
メンタル的な部分で『関学が相手』と構えることがなかったのも無関係ではないと思います。監督という敵役を相手に、チームが団結していたことも大きかったんじゃないかな」
結局この年の日大は、1年生主体のチームで老獪な王者を23-17で破ってみせた。それは実に11年ぶりとなる関東勢の勝利でもあった。
林の経験談と当時の日大のやり方を踏まえ、関学を上回った理由を考えると、1つの仮説が成り立つ。徹底した実戦練習で培った間合いの感覚や、フットボールスキルだ。このことについても、林なりの持論があるという。