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「飯伏幸太の本質はロマンチスト」 新日本プロレス退団後、なぜ新興団体で国内復帰したのか? 41歳の哀愁も魅力、“型破りな天才”の現在
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byGLEAT
posted2023/10/28 11:04
GLEAT両国国技館大会の最終試合に登場した飯伏幸太
選手たちも知らなかった“飯伏参戦”
大相撲の会場でもあり、両国国技館は世間でもよく知られた名前だ。“両国進出”は団体に力がある証になる。実は飯伏も、デビューした団体DDTの両国国技館進出を体験している。
「世間からの見られ方、風向きが変わるのを実感したんでしょうね」
といって、両国大会開催は簡単なことではない。まず大相撲の本場所期間が埋まっているし、それ以外の土日祝日もかなり前から予約する必要がある。鈴木によると「毎日のように国技館サイドに確認して」ようやく決まったのが8月4日の金曜日。その時には7月1日のビッグマッチ、TDCホール大会も決まっていた。
選手たちも知らなかった飯伏参戦がサプライズ発表されたのは、7.1TDCホール大会のエンディング。開催まで1カ月はあまりに短かった。観衆は2215人。正直に言えば空席が目立ったが、団体初の“2000人超え”を達成している。やはり飯伏効果だろう。
「2000人というのは、一つの山をクリアしたのかなと。飯伏さんの参戦は大きかったですが、他の試合はほぼ通常のGLEATと同じ構成。それで2000人を突破できたという手応えもありました。何しろ初めての両国大会ですから、2000というのはすべてが上積み。何も減ってないんです。言ってみれば、空席はすべて今後の可能性ですよね。YouTubeでの生中継も目標以上の数字でした」
「大きな団体にはスーパースターが必要」
GLEATの大会は生であれディレイであれ、YouTubeで配信されるのが基本だ。両国大会もYouTube生中継。スペシャルなイベントだから有料でもよかった気がするが、まだそういう段階ではないと鈴木は言う。
「有料配信をするとなると設備投資も必要ですし、何より子供たちが見る機会を減らしてしまう。中高生に手軽にプロレスを見てほしいですし、そこからGLEATを好きになってもらうのが大事なんです」
飯伏の参戦自体、GLEATの今後を考えてのことだった。団体の知名度を上げるだけでなく、所属選手たちへの刺激という面も大きかったそうだ。
「新日本さんは、世間的にも知名度のある人気選手が団体を引っ張る“スーパースター制”なんです。かつてのアントニオ猪木さん、棚橋弘至選手と中邑真輔選手の時代があって、今ならオカダ・カズチカ選手や内藤哲也選手。ウチも含めた多くの団体は“複数スター制”です。大会ごとに活躍する選手が変わる一方で、絶対的な存在がいない。大きな団体にはスーパースターが必要だというのが私の持論です。だからGLEATの選手たちに、飯伏幸太というスーパースターに触れてほしかった」