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《日本勢3人目の快挙》雨でも速いマシンでもないのに、角田裕毅がファステストラップを刻めた理由とは

posted2023/10/25 17:01

 
《日本勢3人目の快挙》雨でも速いマシンでもないのに、角田裕毅がファステストラップを刻めた理由とは<Number Web> photograph by Getty Images / Red Bull Content Pool

アメリカGPで、角田は今季4度目にして最高位の8位で入賞を果たした

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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 第19戦アメリカGPで、アルファタウリの角田裕毅が日本人F1ドライバーとして3人目となる快挙を達成した。レース中に最も速いラップタイムを刻んだドライバーに贈られる「ファステストラップ」を獲得したのである。

 日本人初のファステストラップは、1989年の中嶋悟だ。所属していたロータスはこの年、ホンダ・エンジンを失い、非力なジャッド・エンジンを搭載していた。経営陣がシーズン半ばに交代する混乱の中で車体の開発もおぼつかず、中嶋はシーズンを通して苦しいレースを強いられていた。

 アデレードで行われた最終戦オーストラリアGPは、雨。これが中嶋に味方した。雨が降れば、路面が滑りやすくなるため最高速が下がる。非力なジャッド・エンジンのデメリットを最小限に止めることができた。

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 また当時36歳の中嶋にとって、F1マシンの強力なダウンフォースとコーナーリング時にかかる横G、パワーステアリングがないハンドル操作は体力的に厳しい作業だったが、雨が降ったことでこれらの負担が軽減された。ほかのドライバーにとっては雨のレースは滑りやすい難しいコンディションとなったが、力よりもテクニックを駆使する中嶋には持ってこいのコンディションとなった。

 3番手を走るリカルド・パトレーゼに及ばず、惜しくも日本人初の表彰台を逃したものの、「雨のナカジマ」を世界に知らしめた。

鈴鹿の歓喜の伏線となったファステストラップ

 日本人として2人目は、それから23年後の2012年の小林可夢偉だ。この年、可夢偉が所属していたザウバーのマシンは表彰台を争えるポテンシャルがあり、第2戦マレーシアGPではチームメートのセルジオ・ペレスが表彰台を獲得していた。迎えた第3戦中国GP予選で、可夢偉は当時、自己最高位となる4位を獲得。予選2位だったルイス・ハミルトン(当時マクラーレン)がペナルティを受けてグリッドが降格したため、レースは3番手からのスタートとなった。

【次ページ】 狙い通りの最速タイム

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