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[万能ロックの献身]アマト・ファカタヴァ「優しさを力に変えて」
posted2023/10/14 09:02
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph by
Kiichi Matsumoto
勝利を義務付けられた初戦で日本を牽引したのは、大会直前の怪我を乗り越え、追加登録された男だった。並外れた速さを生かし、最後まで仲間のために動く――。 トンガ出身FWの逞しいメンタルの源泉とは何か。
眩しいほどに輝いていた。
初出場したラグビー界最大の祭典、その初戦でチリ代表から2トライを奪い、プレイヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)を受賞したのだ。
「みんなのプレーが素晴らしかったです。興奮しました。仲間の存在なしには(POM受賞は)語れません」
栄誉に浴した感想を問われ、チームの一員であることを殊勝に強調した男の名はアマト・ファカタヴァ。トンガ出身の28歳だ。
日本にとって大会初トライとなった開始8分の一撃は、鮮烈なスピードが光った。
7点を先制されたジャパン。敵陣でSH流大が仕掛け、守備を引きつける。生まれたスペースへ走り込んだ背番号5が、ロックとは思えぬ加速力でディフェンダーを振り切り、スタジアム・ド・トゥールーズに歓喜を呼んだ。
それもそのはず、空中戦の強さが求められるロックは実は本職ではない。所属先のリコーブラックラムズ東京では、突破力が求められるFW第3列(FL、No.8)で起用されているのだ。
「10~20mのスプリントの速さはチーム内で一番では」
そう話すのはブラックラムズのSH高橋敏也だ。195cm、118kgの巨漢としては異次元のスピードを見込まれたのだろう、'20年の国内リーグデビューは先発ウィングで記録している。トライゲッターとしての期待は、日本代表においても同様だ。