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「物価高…カレー弁当1900円、ビール1杯1300円、電車は20分遅れ」ラグビーW杯、フランス現地記者ここまでの本音「4年前、日本は良かったなあ」
posted2023/09/13 11:05
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kiichi Matsumoto
金曜の午後6時1分、夕食の支度をしていたら、フランスの番号から携帯に着信があった。怪しい。「何ごとか?」と思って応答すると、
「JUN? こちら、ボルドーのメディア担当者です」
と女性の声がした。英語だが、フランス語のアクセントが強い。
前日夕方にいきなり「ボルドーに来ていいわよ」
私は土曜日の午後3時30分、ボルドーで行われるアイルランド対ルーマニア戦の取材申請を7月の段階で済ませていた。ところが、取材許可が前日になっても下りていなかった。電話はその件についてだった。
申請の可否については、以下の3通りのパターンがある。
Confirmed (オッケーよ)
In Progress(いま、やってます)
Rejected (あんたお断り)
ボルドーの試合については、ずっとIn Progressの状態が続いていて、どうしたものかと困っていた。
さすがに前日の朝には分かると期待していたが、それでも分からず、私は取材が出来るかどうかは別として、同行の文藝春秋写真部員Mくんは(彼はアマト・ファカタヴァとの相性が良い。彼のトライは必ず撮影している)、許可が下りていたので、旅行気分でついていくことにしていた。
金曜夕方に電話をかけてきた女性は、こう言った。
「JUN、明日あなた来てもいいわよ。ボルドーに」
なんと! 試合開始まで24時間を切った段階でようやく申請が通るとは! こんなことはかつてどの取材でも体験したことはないが、とてもうれしくなり、電話口で「Merci!」を連発してしまった。
“1900円のカレー弁当”
翌朝、欣喜雀躍して土曜日の朝9時24分、ボルドー行きの列車にMくんと乗った。
この日帰り小旅行取材は、驚きに満ちたものとなる。
ボルドーのメディアセンターに到着すると、日本人記者は私ひとりだけだった。ほかのみなさんは、日本の試合前日練習の取材だろう。カメラは日本人が4人。