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「隠しカメラで選手を観察した」エディー・ジョーンズが日本の選手を“あえてイラつかせたワケ”「上からの命令に従う文化を変える」
text by
エディー・ジョーンズEddie Jones
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/09/18 17:01
2012年から2015年まで日本代表を率いたエディー・ジョーンズ。日本選手を追い込む姿勢の裏にはある信念があった――
15分が経過した。1、2人の選手が不満を口にし始め、対立の兆しが見えてきた。20分が経過し、不満の声がまた上がり、結局また静かになった。30分後、ほとんどの選手がうんざりした様子になり、怒っているようにも見えた。私は、この無言の対立状態を統率する者が現れるのを見守った。ついに、数人の年長の選手たちがリーダーシップを発揮した。我々はまだその場に姿を現さなかった。選手たちはゆっくりと椅子から立ち上がり、それぞれのグループで話し合いを始めた。活気づいた時間は短かったが、次の練習の内容について、選手たちはチームで何をすべきか、お互いの意見を聞いて励まし合っていた。私はそれを見て胸が熱くなった。これを機に選手たちは、本物のリーダーとは何かを認識し始めた。
なぜ彼らをそこまで厳しく追い込んだのか
それから数日は、なんの支障もなく過ぎていった。私は時計のような正確さですべてを進行させた。誰もが快適なルーティンに戻っていた。皆、自分の立ち位置とやるべきことを理解していた。私は別の場所での練習試合を計画し、選手たちに午後1時のチームバスに乗るよう指示した。全員が時間通りに集まり、バスの到着を待った。私は運転手に、駐車場でバスを止めて待つよう頼んでいた。そして他のコーチたちとともに、再び心配して右往左往している選手たちを少し離れた場所から観察した。彼らの静かな期待は焦りに変わり、そして苛立ちとなった。怒りの声が上がり始めたが、それは悪いことではなかった。選手たちは相談し、誰かが私を探しに行き、試合が本当に行われるのか確認することに決めた。
彼らはもともと混乱を嫌ったが、今回はチームとしてより迅速に行動した。前回の経験が良い教訓になっていたのだ。フィールドの内外で不測の事態に備えるべきだという、私からのメッセージを理解していた。それ以降、我々はさらに心を開いて話すようになった。
また私は選手たちを、極限の疲労や強い不安に追い込まなければならなかった。それは、変革を推し進めるために必要なことだった。選手たちが最悪の状態にあるときに、私のやり方に対する反対意見や疑問の声は上がる。新たな葛藤のなかで、私がなぜ彼らをそこまで厳しく追い込んだのか、議論することができた。
プレッシャーに耐えられないなら、準備が不足している
我々は議論の末、インターナショナルなラグビーの世界では、タフで激しく肉体がぶつかり合う試合を戦わなければならないため、練習もその激しさに耐えうることを目的にしなければならないという考えで同意した。私は厳しい練習を通じて選手たちに世界の強豪に勝つための方法を与えていた。極限の状況に対処できるよう、彼らを肉体的、精神的に鍛えていた。日本代表はそれまで24年間、ワールドカップで勝っていなかった。だが南アフリカ戦では勝利に向けて一致団結した。試合終了間際、ペナルティキックで32対32の引き分けに持ち込める状況のなかで、選手たちは勝つためにトライを狙いに行った。それができるだけの力を身につけていたからだ。試合終了後、キャプテンのマイケル・リーチは私に言った。