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バスケットボールPRESSBACK NUMBER
「世界で戦う上で気持ちで負けては…」“異端シューター富永啓生”の父・啓之さんが語る「めちゃくちゃ叱った」高校時代〜22歳の秘話
text by
大柴壮平Sohei Oshiba
photograph byGetty Images
posted2023/08/29 11:05
バスケットボール日本代表で存在感を見せる富永啓生
「アメリカに行って良かったのはオンコートの部分、特にメンタル面だと思います。向こうではいろんなことを言われるんですよ。アウェイならアジア人差別もあります。コーナーに立っているときなんかはボロカス言われるらしいんですね。そういうところでも、俺がシュートを決めて相手を黙らせてやるという気持ちを持ってプレーできているのは強みでしょうね」
世界と戦う上で気持ちで負けてはいけません
この話を聞いて思い出されるのが、7月に韓国と行った強化試合2連戦での一幕だ。2試合目の第3クォーター、ボックスアウトの際に韓国のソン・ギョチャンが富永の腹にパンチを見舞った。すると富永は、アンスポの判定で得たフリースローを沈めると、その直後にアウェイの客席に向かって黙れというように人差し指を口元に当てるジェスチャーをしたのだ。
「試合後、啓生には『喧嘩したらダメだろ』と言ったんですけどね」
啓之さんは苦笑しつつも続けた。
「でも、あのぐらいの気持ちが無いと世界とは戦えないと思っています。韓国との2試合も、相手がフィジカルに来るとわかっているのに初戦の日本は対応できていませんでした。フィジカルに来られて、萎縮してしまったように見えます。2試合目にリベンジは果たしましたが、ワールドカップ本番に2試合目はありません。フィジカルに来られようがダーティに来られようが、気持ちで負けてはいけないんです」
母国でワールドカップを開催できるという栄誉の一方で、日本は強敵揃いのグループに入ってしまった。東京五輪で銅メダルを獲得したオーストラリアも難敵だが、他2国もドイツはフランツ・ワグナー、フィンランドはラウリ・マルカネンと、それぞれNBAでエースを務める選手を擁している。
厳しい挑戦になるが、富永のキャリアにとってはポジティブな面もあると啓之さんは語る。
「昨シーズンは啓生もNCAAという舞台で活躍することができましたが、NBAに行くという目標を考えると、もっと知名度を上げていく必要があります。今回のワールドカップで世界の強豪とやれるおかげで、スカウトにプレーを見てもらえるのはチャンスと捉えたいですね。もちろん日本を勝利に導くのが一番大事ですが、啓生の場合は点を取ることが仕事なので、物おじせずに打つことが彼のキャリアにとっても日本代表にとっても大事だと思います」
自分では一生懸命やっているつもりなんですけど
昨シーズンの活躍で、世界最高峰のリーグNBAに手が届くところまできた。そんな息子の姿を見守るのが楽しくて仕方がないといった様子の啓之さんだが、ミニバス時代までは「啓生は僕の顔色を窺いながらプレーしていた」と言うほど怖い父親だったという。