NumberPREMIER ExBACK NUMBER
なぜ森保一監督は想定を越えられなかったのか?「1つ目は選考の失策。2つ目は…」現地記者が見た“森保ジャパン”の課題とは
posted2026/07/16 06:00
ブラジルに敗れ決勝トーナメント1回戦の壁はまたも破れなかった。森保一監督はなぜ想定を越えられなかったのか
text by

木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
発売中のNumber7/23特別増刊号に掲載の[記者が見たマネジメント]森保JAPANの進化と今後の課題より内容を一部抜粋してお届けします。
森保監督が力説した“恩”と“感謝”の意識
ナッシュビルでの最終日のことだ。
日本代表がベースキャンプとしていた同地での最後の練習を終え、ブラジル戦が行われるヒューストンへ出発しようとするなか、現地在住の日本人がサインを求めて練習施設の外に駆けつけた。
ファンは敷地に入れないため、選手に入口まで歩いてきてもらわないとサインをもらうことはできない。
ADVERTISEMENT
そんな中、訪れた数十人全員との写真撮影に応じたのが森保一監督だった。最後には列の前に立って「いつも日本代表への応援をありがとうございます。現地に住むみなさんの励みになれるように頑張りたいと思います」とスピーチまでしている。
ナッシュビル在住19年のトレーダー千珠子さんはこう振り返る。
「今回スタジアムだけでなく、ナッシュビルにも日本代表のユニフォームを着たアメリカの人がたくさんいて、日本がリスペクトされていることがすごく伝わってきました。クリーンな戦い方が心を打つそうです。日本代表は間違いなく日本の価値を高めていますよ。現地在住の日本人にとって日本代表は誇りを与えてくれる存在です」
常に礼と感謝を示す森保監督は、今大会において「日本らしさ」の象徴になった。
たとえばオランダ戦の前日会見では、地元ダラスの記者が「日本のメンタリティ、レジリエンス(粘り強さ)、哲学を教えてください」と請うた。
森保監督は堂々と説明した。
「粘り強さは日本人の世界に誇れる良さだと思います。日本はひとたび目標が定まれば、それに必要なプロセスを勤勉にやり続ける力を持っている。試合では終了までハードワークでき、状況が悪くなっても戦い抜くことができる。過去の歴史がつながって今の我々がいます」
そして世界的に最もバズったのはオランダ戦の試合後会見での一幕だ。質疑応答が終わると森保監督は「しゃべっていいですか」と切り出し、「日本サッカーに貢献したオランダ人指導者、ハンス・オフトとビム・ヤンセンへ感謝しています」と述べた。
シンガポール出身の記者、メリッサ・チェンはXで「みなさん、この美しい瞬間を見逃していませんか」とポストした。
「日本人は『恩』という概念を持っています。先人や助けてくれた人々へ感謝を抱く感覚です」
この英文の投稿は世界中に拡散され、115万回以上表示されている。
ピッチ上の戦術的なイノベーション
ピッチ外だけでなく、ピッチ内でも「日本らしさ」は高い評価を得た。
スウェーデン戦後、南ドイツ新聞は「強豪国の監督もこのチームを絶賛している」という見出しをつけて称賛した。
「もし今回のW杯でイノベーション賞が創設されたら、日本が最有力候補のひとつになるだろう。ゴミを拾う模範的なファンが理由ではなく、ピッチ上の戦術的なイノベーションが理由だ。
森保監督率いる日本は、これまで以上に結束力を重視している。最大の強みは攻守両面の組織力で、ポジショニングと動きは教科書通りの完璧さだ。その動きは柔道を彷彿とさせる、規律正しくも芸術的なものだ。グループリーグで日本が受けたイエローカードは1枚のみ。これも森保監督の8年間の継続によるところが大きい」

