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井上尚弥19歳のスパーで感じた「殺気」…“最も苦しめた男”や“連続KO記録”日本人世界王者が語る“モンスターの異様な存在感”
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/08/06 17:01
井上尚弥という稀代の拳闘士を、日本人ボクサーはどう見ているのだろうか
3分3ラウンド、グローブも12オンスというシチュエーションだったが、井上はその時点でWBA、WBCバンタム級世界ランカーとなっていた比嘉相手に変幻自在のボクシングを見せた。
「正直、このスパーリングに関して僕にメリットはないんですよ。比嘉選手に対しては見ている方も(井上相手に)どれだけやれるかという見方をすると思う。その中で僕はレベルの差を見せなきゃいけないですし、互角のスパーをしたら自分の評価は保てない。そういう意味では今日のスパーはプレッシャーがありました。違いは見せられたと思います」
井上は試合後、このように語った。しかし多くのファンの視線を集める“公開スパー”で、井上は序盤から比嘉を攻め立てたかと思えば、比嘉得意の接近戦も交え、最後にはヘッドギアを外したふるまいに、比嘉は“王者の余裕”を「同じ距離感でパンチの強さとか質とか、一瞬の速さとかは見えました」と感じたそうだ。
「最強の対戦相手」田口は1年前に“殺気”を感じていた
<名言3>
「彼は、本気で自分を殺しに来ているな」と感じました。
(田口良一/NumberWeb 2022年6月6日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/853489
◇解説◇
井上が「最強の対戦相手だった」と折に触れて挙げているのが、田口である。
日本ライトフライ級タイトルマッチに臨んだ10年前の2013年8月25日、井上は地元のスカイアリーナ座間での田口戦で3-0の判定勝ちを飾り、当時国内最短記録となる4戦目の日本王座を獲得した。
ただ井上自身が試合直後「KOを狙いたいと思って打ちに行った。倒し切れなかったことは非常にショック。狙いすぎてパンチが見えすぎていた部分があったと思う」と振り返ったように、田口は固いブロックと柔らかなボディワークで井上のパンチに対応し、井上の右ガードが下がるクセを見抜き、カウンターの左フックを見舞う場面もあった。
その一方で、田口は井上の圧倒的なポテンシャルをこの対戦の前から味わっていた。時計の針を戻すこと1年である。