NumberPREMIER ExBACK NUMBER
恩師が語る“人気者”ヌートバーのハイスクール時代「彼はフットボールでも野球でも1番」「ダンスパーティーがあれば先頭を切って踊り…」
posted2023/08/08 11:09
text by
山脇明子Akiko Yamawaki
photograph by
Kumiko Nootbaar
現在発売中のNumber1078号掲載の[現地ルポ]「小さな町の英雄 ヌートバーを訪ねて。」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文は「NumberPREMIER」にてお読みいただけます】
「ラーズはいつも人気者だった」
カリフォルニア州エルセグンド市のレクリエーションセンター。この球場をホームとする地元エルセグンド高校の選手達が球音を響かせていた。10年ほど前、ここにはラーズ・ヌートバーというヒーローがいた。
「ラーズ! サインちょうだい!」と少年たちが叫ぶ。彼はサインをするだけでなく、その後も少年達と楽しそうに話し続けた。
ある時、身体が不自由な子が、野球とフットボールで高校のスター選手だったヌートバーに「一緒にプレーしたい」と言ってきた。すると彼はいやな顔ひとつ見せず、監督にこんな提案をした。
「もしかすると特別な援助が必要かも知れないし、しっかり見ておかなければならないかも知れないけれど、入れてあげてもいいですか?」
「ラーズはいつも人気者だった。そして彼もこのコミュニティにいる人達を大切にし、仲間にした」
エルセグンド高校のスティーブ・シェブリンさんは言う。同校のアスレチック・ディレクターを務めて24年、教師兼コーチとして働き始めて34年。ヌートバーが高校1年生と2年生の時に野球部の監督、フットボールでは4年間(アメリカの高校は4年制)、監督を務めた。
ダンスパーティがあれば先頭を切って踊った
ヌートバーは、気さくで、誰からも好かれる性格だった。そして、周囲をリードする存在だった。高校1年生の時に最上級生だった姉のニコルが生徒会長を務めていたこともあって生徒会の活動も手伝い、長年スポーツチームを陰で支えてくれていたスタッフを称えるイベントを率先して行った。ダンスパーティがあれば先頭を切って踊り、盛り上げてくれる。誰もを引き寄せる魅力に溢れた、学校で1番のアスリートだった。
シェブリンさんのオフィスには、長年指導してきた選手らの写真が壁や棚の上に隙間なく飾られており、そこにはヌートバーや、同じく優れたアスリートとして有名だった兄ナイジェルの写真も多い。
ふと2枚の写真が目についた。ひとつはフットボールの試合後シェブリンさんに寄りかかるヌートバーの頭部にシェブリンさんがキスしている写真だ。