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「実はヒジが痛かったんですよ」山本由伸が恩師に明かした衝撃の告白…高3の夏、誰にも痛みを告げずマウンドへ「もう1試合投げていたら…」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2023/07/10 17:01
都城高時代は甲子園出場経験がなかったオリックスの山本由伸。高3最後の夏のマウンドについて語った
しかしそんな山本と都城の夏は、予想外にあっさり終わりを告げてしまった。
初戦となった2回戦の延岡学園戦は先発した山本が7回3分の2を投げて3安打1失点で11個の三振を奪うピッチングを見せて7対3と完勝した。
そして迎えた宮崎商戦。
「相手に山本のことも、チームのことも徹底的に研究されていたみたいですね」
石原は振り返った。
延岡学園戦から中2日で登った先発マウンドだったが、初回から山本にはいつもらしさが見えずに、毎回のように走者を背負う苦しいピッチングが続いた。
「実は右肘が夏の大会前からちょっとずつ痛くなっていて、ちょうどあの試合はピークに痛くなってしまって……」
ただ山本はそのことを誰にも告げずに、マウンドに上がっていた。
異変を何となく感じていたのは、背中から山本を見ていた小野川だ。
「いつもなら分かるんです。ああこれは三振だなって。でもあの試合はそういうのがなかった。何か変だ、いつもと違うな、と。そう思ってセカンドから見ていました」
痛みの中でも山本はMAX148kmを計時し、変化球を駆使して10個の三振を奪った。しかしジリジリと両軍0行進が続いた5回裏の宮崎商の攻撃。1死一、三塁から相手のエースで4番の黒木一に先制適時打を打たれると、直後にスクイズで2点目を許した。この2点が勝負を決める、投手戦の末の敗北だった。
「2対0というスコアを見たらいい試合に思えますけど、別にそんなに接戦ができたわけではなく負けちゃった感じでした」