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斬新なタイトルに込められた
カズらしさ。
~新書『やめないよ』発売によせて~ 

text by

近藤篤

近藤篤Atsushi Kondo

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posted2011/02/06 08:00

斬新なタイトルに込められたカズらしさ。~新書『やめないよ』発売によせて~<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『やめないよ』 三浦知良著 新潮新書 740円+税

 カズと僕はほぼ同じ世代に属する。

 僕たちの世代、それは日本サッカーがメキシコ五輪で世界をほんの少し驚かせた頃に生まれ、日本サッカーがどん底の頃にボールを蹴り始めた世代だ。

「プロになる」

 15歳の彼がそう言って静岡からブラジルに渡ったとき、僕は大学1年生だった。小さな下宿の部屋で、日本代表の試合中継を見て、そのあまりの駄目っぷりに腹が立ち、表通りにテレビを捨てたりしていた頃だ(後悔して取りに行ったら、もう誰かが持っていった後だった)。

 もちろんカズなんて名前は知らなかったし、その後の彼の活躍や、Jリーグの誕生、W杯出場なんてことは想像もしていなかった。

 あれから30年ほどが経つ。僕は胃の具合が悪かったり、膝の調子が悪かったりして、毎月いろんな薬を飲んでいる。

 カズはJ2の横浜FCに所属して、未だにプロサッカー選手であり続けている。昨季はほとんど出番はなかったが、最終戦では大分トリニータ相手にフル出場し、得点まで決めた。

 マジかよ、と思う。

カズとのツーショット写真を撮りたがった原口元気と山田直輝。

 2年ほど前のことだ。

 僕は浦和レッズのクラブハウスで、ユース上がりの選手たちの写真を撮っていた。その日、グラウンドでは浦和と横浜FCのサブ組が練習試合を行なっていて、そこにはカズの姿もあった。

 撮影が終わると、僕の耳に「原口元気と山田直輝がカズと写真を撮りたいらしいんですけど」という声が聞こえてきた。練習後のシャワーを浴び終え、表で白いガウンに着替えたカズをつかまえて事情を話すと、彼は、ああいいよ、いま? ちょっと待ってて、と答え、ロッカールームの中へ戻っていった。

 カズを待つ間、僕は若者2人に尋ねた。

――全盛期のカズのプレー、生で見たことあるの?

「ないっす」

「おれもないっす」

――でも一緒に写真撮りたいんだ。

「はい」

「はい」

 若い彼らと話していると、Yes Noクイズをやっているような気分になる。

――なんで?

「だって、キングじゃないっすか!」

【次ページ】 43年分の説得力が詰まった『やめないよ』。

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