それに「関西の球団なら、どこでも御堂筋パレードしていいわけではない」との意識があった。その後、阪急ブレーブス、近鉄バファローズなどがリーグ優勝、日本一になったが、御堂筋パレードの話はおきなかった。

　一方で1985年、阪神タイガースが優勝。道頓堀にダイブするファンが続出した。筆者が住む大阪近郊の小都市でさえも、虎の法被を着たあんちゃんが駅前で騒いでいたくらいで、関西中が沸きに沸いた。

　このときに「御堂筋パレードしようやないか」という話が起こったが、まだ南海ホークスは大阪に健在で、ホークスファンから「御堂筋のミナミのドン突きには大阪球場があるやろが、その球場はどこのチームが使てる思てんねん」と抗議の声が出て、警察当局が「警備上の問題がある」と発表し、沙汰やみとなった。

阪神も御堂筋パレードをやったけど…

　2003年になって、阪神タイガースが御堂筋パレードを44年ぶりに実施した。すでに南海ホークスは福岡に移転し、大阪球場跡地は商業施設になり、異を唱えるファンはいなくなった。そこで御堂筋パレードを挙行したわけだ。阪神は2005年にも御堂筋パレードをしている。

　しかしながら、今も大阪の市井で細々と生きる「南海ホークスファン」の残党は“納得がいかん”と言う。「2003年は福岡ダイエーホークス、2005年は千葉ロッテマリーンズに日本シリーズで負けとるやないか。鶴岡御大は、巨人に勝って日本一になってパレードをしたんや。リーグ優勝でパレードするのはおかしいのと違うか」と居酒屋あたりで言っていたのだ。

　それからまた17年が経った。

　オリックス・バファローズは西宮に本拠地球場があった阪急ブレーブスと、大阪府藤井寺市と大阪市内に本拠地があった近鉄バファローズの末裔である。どちらのチームも優勝して御堂筋パレードをしたことはない。

　しかしオリックス・バファローズの本拠地は、御堂筋から歩いていけないこともない京セラドーム大阪。御堂筋と縁もゆかりもないわけではない。その上、今回は日本一だ。東京を本拠地とするチーム相手に前年の雪辱を果たし、3戦目まで勝ち星なしから4連勝で優勝した。

鶴岡御大も「まあ、ええやろ」と言ってくれるのでは

　個人的な推測だが――市井の南海ホークスファンも小さく拍手をしているのではないか。南海ホークスの末裔の福岡ソフトバンクホークスを「鼻の差」で振り切ったのは悔しいが、ここまで野球ファンを楽しませたのだから「褒めたらなあかん」と。

　11月3日、オリックス・バファローズは「大阪・光の饗宴2022　開宴式」の一環として「御堂筋パレード」を実施する。今回は17時開始、初めての夜のパレードだ。

　泉下の鶴岡一人御大も「まあ、ええやろ」とにんまり笑ってくれるのではないか。

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