濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“元アイドルのパワーファイター”ひめか覚醒の日…父の死を乗り越え、スターダムリーグ戦で林下詩美にも勝利「もうクヨクヨしてられない」
posted2022/08/10 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
スターダム恒例のシングルリーグ戦『5★STAR GP』が7月30日、31日の大田区総合体育館2days大会で開幕した。参加選手は史上最多の26人。2ブロックに分かれての闘いは、10月1日の決勝大会まで続く。丸2カ月、1人あたり公式戦12試合の長丁場だ。
8月7日の段階では4大会が開催されたところ。まだまだ序盤戦で、星取り状況から優勝戦線を占うのは不可能に近い。ただ、そんな中で好スタートを切ったと言えるのがひめかだ。
2年前、決勝で負けた林下に勝利
ここまで2勝1敗。中野たむに敗れているが、7.30大田区の開幕戦で林下詩美に勝利したのは大きかった。林下は一昨年の優勝者であり前ワールド・オブ・スターダム王者。女子プロレス大賞も受賞している。
林下が優勝した時、決勝で対戦したのが初エントリーのひめかだった。優勝した林下はその勢いで“アイコン”岩谷麻優からベルトを奪取し団体トップの座に。一方、ひめかはタッグ、6人タッグのチャンピオンになったものの、シングルで結果を出すという課題が残った。命運は2年前の決勝で分かれたのかもしれなかった。だからこそ、今回の勝利は大きい。キャリアの流れを変えるきっかけにもなりうる。
「初めて出た5★STARの決勝で負けて、やっとその借りが返せた」
試合後のひめかのコメントだ。実はリベンジの準備、リーグ戦優勝のための経験値作りは上半期にしっかりできていた。
「まだまだ私はあんなもんじゃない」の理由
4月29日、朱里が持つワールド王座に初挑戦。シングルプレイヤーとしての自分を確立するための闘いだった。所属ユニットDonna del Mondo(DDM)に貢献することを第一に考えてきたが、やはり“個”としての主張もないと埋もれてしまう。朱里戦は「間違いなくキャリア最大の分岐点」であり「ベルトを狙うだけじゃなく、何かを残さなきゃいけない」という決意を持っての挑戦だった。
結果として敗れたが、ひめかは確かに爪痕を残した。大きな体で場外に飛び、得意のジャンピングニーアタックもコーナーからダイブして放つ。身長172cm、元アイドルにしてパワーファイターの大器がついに“覚醒”した。そんな試合だった。ただひめか本人はこう言っている。
「あの試合で覚醒したとか一皮むけたと言ってくれる人も多いんですけど、まだまだ私はあんなもんじゃない」