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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「箱根駅伝だけを目指していると、目標を見失う」 大八木弘明監督が明かす“過熱する箱根人気”への本音…なぜ駒澤大OBは卒業後も活躍できる?
posted2022/05/04 17:01
text by
加藤康博Yasuhiro Kato
photograph by
Shigeki Yamamoto
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口癖は「箱根だけで終わってはいけない」
箱根駅伝の優勝回数7回、全日本大学駅伝での勝利は14回を数える駒澤大学。その監督、大八木弘明は闘将と呼ぶにふさわしい熱血漢だ。中村匠吾(富士通)は卒業後も指導を続けて東京五輪男子マラソン代表へと導き、現在駒澤大4年の田澤廉は昨年12月に、今夏アメリカ・オレゴンで行われる世界選手権の参加標準記録を突破し、世界挑戦の真っ最中。駅伝だけに留まらず、マラソン、トラックでも多くの教え子が活躍している。
「駒澤大で指導を始めた早い段階から卒業後に活躍できる選手、それも世界で戦える選手を育てたいと考えていました。もちろん箱根駅伝は大きな目標ですし、選手に勝たせてあげたいと思って一生懸命やっています。しかしそこは同時に通過点でもあるので、“箱根だけで終わってはいけないよ”という話は常に選手にはしているんです」
考える危険性「生涯ベストが大学時代というのは…」
2021年に新設されたジャパンマラソンチャンピオンシップシリーズでは2月の別府大分毎日マラソンを制した西山雄介(トヨタ自動車)を筆頭に、他のグレード1の3レースでもOBの大塚翔平(九電工)、山下一貴(三菱重工)、其田健也(JR東日本)がそれぞれ日本人2位に入った。確かに卒業生の活躍が目につく。
大学の指導者である以上、大学での戦いで結果が求められるのは当然のこと。加えて箱根駅伝が陸上界の枠を超えたビッグイベントとなった今、その結果で手腕が評価されることがほとんどだ。しかし「実業団に進むのであれば、本当の勝負は卒業後」と大八木は考えている。
「大学で練習を詰め込めば記録は伸びるかもしれませんし、結果も残すでしょう。しかし大学で目いっぱいの練習をしてしまうと、そこで焼ききれてしまう危険性もあります。多くの選手が実業団に進むわけですから、生涯のベストタイムが大学時代の記録というのは避けなければならないんです。そのため腹八分目ではないですが、うちの練習は余裕度を重視し、卒業後の伸びしろを残すように意識しています」