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将棋PRESSBACK NUMBER
「若いのにAIのテクニックばかり学んでていいのか」“NBAフリーク棋士”が最先端バスケや藤井聡太・渡辺明に感じる凄みとは
posted2022/03/26 17:02
text by
北野新太Arata Kitano
photograph by
Arata Kitano
――2017年に藤井さんがデビューから不敗のまま史上最多の29連勝を達成した時の相手が増田さんでしたけど、あれから5年が過ぎた今の藤井将棋をどう見ているのでしょうか。
「メディアではAI研究について言及されることは多いですけど、やはり中終盤力の差が大きいんです。周りは形勢を良くしようとして序盤研究を深めますけど、結局は変化(局面の分岐)が多すぎるので、全て対応するなんて不可能なんです。ならば、少なくとも自分の持つ中終盤力を発揮しないといけない。でも、フィジカルとメンタルのコンディションが整って初めて、中終盤のパフォーマンスって成り立つものだと思うんです。
ならば、どうコンディションを整えるか。大切なのは規律だと思います。規則正しい生活を送るかどうか、というようなことが単純に大きいことであるように思います。だって、藤井さんを見ていて『今日はコンディションを崩していそうだな』という日、ありますか? 僕が見ている限りはありません。才能は確実に藤井さんが上なので、こちらのコンディションが良くなければ、いくら研究を深めても話にならないんです」
「藤井さんは完全に律することができてますよね」
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――棋士個人における規律とは、どう定義できるものなのでしょうか。
「極端な話として、ある世界的ボディビルダーが『12年間は僧侶のような生活を続けないと私と同じ場所に行くのは不可能だ』と語っていますけど、個人の規律は生活の全てに関わるものです。良い睡眠を取ることを継続できるかどうか。スマートフォンを眺める時間を極力減らせるかどうか。電子機器に触れ続けていると確実に脳に悪影響が出ます。
私自身、特に早指しの対局などでは、指した後に『きっちりコンディションを合わせられたな』とか『状態に余裕があったから手が伸びた(積極的に指せた)な』と感じることがあります。そんなのプロなら当たり前では? と思われるかもしれませんけど、言うのは簡単で、実行するかどうかは難しいです。長く継続できない人が大半だと思います」
――藤井さんの「規律」は、どんなふうに映っているのでしょう。
「完全に律することができてますよね。正直、大金を手にして名声も得て、普通の19歳なら少しは満足して緩みますよ。あれだけ強ければ『多少緩んでも勝てるでしょ』って思ったり、研究の意欲を失ったりするのが普通ですよ。でも、彼は完全に自分を律することができている。だから、もう誰でもやっているAI研究を真似するとかではなくて、藤井さんから見習うべきは規律だと思ってます。生活から見直さないと戦うところまでいけない」
藤井聡太はマイケル・ジョーダンに似ているところが?
――時代における最高の領域に達した人が自分を律して生きていたら、付け入る隙を見つけるのは難しいかもしれない。