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大阪桐蔭史上最高の才能と言われた中田翔「入学から同級生は下に見ていました」ガキ大将を変えた“ヒロコの坂道ダッシュ”とは?  

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/03/23 17:01

大阪桐蔭史上最高の才能と言われた中田翔「入学から同級生は下に見ていました」ガキ大将を変えた“ヒロコの坂道ダッシュ”とは? <Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2018年夏、史上初の2度目の春夏連覇を達成した大阪桐蔭

 あれから1年。根尾はプロに入って最初の夏を二軍で迎えている。打率は1割台を這い、逆に三振の数は積み上がっていく。すると周りは言う。なぜ変わろうとしないのか。それでも、根尾は頑なに強く大きくバットを振り続けている。

「試合への準備というのは高校時代から何も変わっていません。技術的にはもちろん変わっていますし、もっと変えていくべきなのかもしれません……。ただ、自分がこうなりたいというものは変えてはいけないのかなとも思うんです。とにかく経験して、1歩ずつ上がっていかないといけません」

 この坂を上りきった先に何かがある。そう信じる根尾の眼はあの日と同じだ。

 ひとつの節目を迎えた34歳も。脂の乗った30歳も。そして、まだ漕ぎ出したばかりの19歳も。どこか通底するものがある。

 西岡が地方球場の土煙の中で呟いた。

「僕が栃木に行くと報告したら、西谷さんは『お前らしい人生の選び方だな』と、そう言ってくれました。あの人は僕らの時代も、甲子園常連校になった今も、まったく変わらない。それが凄いんです」

 大阪と奈良をまたいだ生駒山の上のグラウンドには、あの頃からずっと急斜面と大きな恰幅の情熱がそびえている。

 夏が来る。今年もまた真っ白な練習着の球児たちが、あの坂を駆け上がる。

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「やめさせたいんなら、殺してみろ!」大阪桐蔭“最低の学年”と呼ばれたヤンチャ軍団はなぜ甲子園に行けたのか…OB西岡剛の証言

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