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ロックンロールとしてのベースボールBACK NUMBER
桑田佳祐は「日本ロック界の長嶋茂雄」である… 名曲『栄光の男』から推察する、ミスターへの応援メッセージとは
posted2022/01/29 17:02
text by
スージー鈴木Suzie Suzuki
photograph by
Getty Images
「ロック野球殿堂」を勝手に立ち上げようと思い立った。
本物の日本野球殿堂の方では、漫画家・水島新司の逝去に関連して、彼が殿堂入り出来なかったことを嘆く声が上がった。このNumber Webでは、広尾晃氏が「半世紀以上にわたって野球漫画を描き続けた水島新司の貢献度は、2000安打、200勝を記録した大選手に匹敵すると思うだけに、痛恨ではある」と書いた。
となると、本物の野球殿堂で、漫画家を超えて、音楽家が表彰されることなんて、先の先になりそうだ。ましてやロック系の殿堂入りなど、未来永劫あり得ないかも。だとしたら、「ロック野球殿堂」を勝手に立ち上げるしかない。
というわけで、「ロック野球殿堂」入りが決定した音楽家を、この連載で、断続的に紹介していきたい。第1回表彰は「日本ロック界の長嶋茂雄」とでも評すべき、桑田佳祐。勝手に立ち上げた私が言うのも何だが、おめでとうございます。
「日本ロック史上の最重要人物」である桑田
そもそも私は、桑田佳祐という人を、「日本ロック界の長嶋茂雄」を超えて「日本ロック史上の最重要人物」だと捉えている。
辺見じゅん『大下弘 虹の生涯』(新潮文庫)によれば、「三原マジック」で知られた昭和の名将=三原脩は、こう語ったという。
《日本の野球の打撃人を五人あげるとすれば、
川上、大下、中西、長嶋、王。
三人に絞るとすれば、
大下、中西、長嶋。
そして、たった一人選ぶとすれば、
大下弘。》
この、いかにも三原脩的なけれん味たっぷりの言い回しを借用して、私はこう言いたい。
「日本の“ロック人”を5人あげるとすれば、かまやつひろし、吉田拓郎、矢沢永吉、山下達郎、桑田佳祐。3人に絞るとすれば、吉田拓郎、矢沢永吉、桑田佳祐。そして、たった1人選ぶとすれば――桑田佳祐」
この意見には、異論反論が多くありそうだ。あくまで個人的意見なので大目に見てほしいのだが、一応は、日本ロック史に与えた「革命性」と「影響力」で選んだつもりである。
ロック、野球をエンタメのど真ん中に引きずり込んだ
最後の1人が桑田佳祐となるのは、ロックビートへの日本語の乗せ方を確立した強烈な「革命性」と、「ロックをエンタメのど真ん中に引きずり込んだ」とでも言うべき莫大な「影響力」との総和から判断した。ゆえに「日本ロック史上の最重要人物」だと考えている。
この「ロックをエンタメのど真ん中に引きずり込んだ」という点について、桑田佳祐は長嶋茂雄と響き合う。「プロ野球をエンタメのど真ん中に引きずり込んだ」最大の功労者が長嶋茂雄だということに、異を唱える向きは少ないだろう。
では、桑田佳祐と長嶋茂雄がなぜ、ロック/プロ野球を「エンタメのど真ん中」に引きずり込めたのか。ここに本質的な2人の共通点――「明朗快活さ」がある。