高校に入学後、早くからレギュラーになったとはいえ、他校の選手を見ればどうしても自分と比較してしまう。新たな志を抱いても、ネックになったのは体の大きさだった。

「体の力もそうですし、自分はやはり身長が……。この3年間は常に体作りは意識してやってきたつもりです。守備はもちろんですが、打撃ももっと磨いてすべてをレベルアップさせなければと思いながらやってきました」

　ただ、滝澤のプレーひとつひとつを見ていると、そんなネガティブな空気をまったく感じないのだ。自身のプレースタイルについて尋ねると、滝澤は「スピードです」と即答する。守備でも走塁でも持ち前の俊敏性を前面に出し、小さな体を存分に使ってグラウンドを気持ち良く駆け回っていた。

　大きな放物線やライナー性の当たりだけではなく、滝澤は足で稼ぐ安打も多かった。ボテボテの当たりを打てば、快足を飛ばし敵の守備陣を焦らせる。“ピッチャーから見て嫌なバッター”を目指していくうちに、相手からは警戒され“要注意打者”としてマークも厳しくなった。それでも、相手の思惑をかいくぐるようなスピードを攻守で体現してきた。

©︎Fumi Sawai

あと一歩まで迫った甲子園

　最も甲子園に近づいたのは昨秋の北信越大会。あと1勝すればセンバツ出場が濃厚となる準決勝で、敦賀気比と対戦した。1点リードの8回からマウンドに立ったが、9回2死一、二塁ストライクまで追い込みながら同点打を許し、延長10回にエラーが絡んで逆転負けを喫し、目の前にあったセンバツ切符がスルリと手からこぼれてしまった。

「自分の中で勝ち急いでしまったところがありました。あそこでもう少し冷静に考えてプレーをしていたら結果が変わったような気がします。でも、あの試合を今後に生かして、プラスに変えなきゃいけないとモチベーションにしてきました」

　ただ、昨秋の滝澤の攻守にわたる活躍で、練習を視察したいというNPBスカウトが数人、グラウンドに訪れるようになった。そうやって見てくれるプロの関係者がいることを知り、自然と練習に力が入るようになった。

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