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大谷翔平に「滑りにくい公式球」はプラスか、マイナスか? MLBで導入されれば“投手有利=打者不利”に《直球は簡単に170キロも!?》
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2021/12/14 06:00
MLBで「滑りにくいボール」が導入されれば、投手・大谷翔平のパフォーマンスがさらに向上する可能性も?
東京五輪で使用されたNPB仕様ボールを大絶賛!
遅ればせながら、今季終盤の9月にマイナーリーグでは「滑りにくいボール」でのテストが始まった。
MLBは数年前からNPB公認球を独自入手し、滑りにくいボールの使用へ向け検討に入っていたが、この夏、東京五輪でNPB仕様とほぼ同様の球が使用されると、米国代表チーム内にその品質を賞賛する声が相次いだ。機運は高まったのである。五輪出場後、9月に先発投手としてメジャーデビューを果たしたツインズの25歳の有望株、ジョー・ライアンはこんな言葉を残した。
「あのボールは僕が今までに触れた中で最高の品質のものだった」
滑りやすいボールで投げれば、投手は無意識のうちに脳みそが体に指令を出し、滑らせまいとボールを強く握ってしまう。テークバックからトップを作る際に急激に加速度が増すためだ。その結果、前腕上部の筋肉が硬直し充分なトップを作り出すことが出来ないままに投げるため、肘や肩を痛める。
滑り止め禁止により、故障する投手が続出
今季途中、機構は突然に滑り止め禁止を打ち出した。当初は「スパイダー・タック」と呼ばれるウエイト・リフティングの選手が使用する滑り止めを投球に使用することを禁止するためだったが、松ヤニやシェービング・クリームなどの粘着物質までもが取り締まり対象となってしまった。暗黙の了解で許されていたものが禁止されたことで、投手はグリップを失い、トミー・ジョン手術にまで発展した選手も生まれた。
手術を受けた代表例がレイズの28歳のエース、タイラー・グラスノーであり、グリップ力を失ったことで投球フォームを崩した投手は数えきれないほどいる。
7月にレイズからマリナーズへ移籍した救援投手のディエゴ・カスティーヨはそのひとりだった。昨季、レイズのワールドシリーズ進出を支えた右腕は97マイル(約156キロ)のシンカーが売りのパワー投手だが、今季の取り締まりが始まった6月以降では自慢のシンカーは93マイル(約150キロ)程度にまで減速してしまった。テークバックからトップへの再現性が維持できなくなったことが原因だった。