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野球クロスロードBACK NUMBER
「浅村選手の動画を観ていたら『あ、あの曲だ』って」“相思相愛”だった楽天と吉野創士(ドラフト1位)…監督「運命的なものを彼は持っている」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2021/12/05 06:02
12月4日、初めて楽天のユニフォーム姿で登場した高卒ドラ1・吉野創士
吉野は今、有言実行を果たすため体を強化し、技術に磨きをかける。
肉体面は高校時代に課題だった、体幹ほかインナーマッスルをメインに強化している。バランスボールやバランスディスク、メディシンボールなどの器具を使いながら、上半身、下半身の鍛錬に余念がない。
打撃では目下、スピードに慣れる作業に重点を置いている。マウンドからホームベースまでの18.44メートルの距離から6メートルほど近づけた位置にマシンを設置し、140~145キロに設定したボールを打ち込む。
その一方で、スローボールを打つ練習も取り入れているという。スイングに移行する際の「テイクバック」と「足を上げる」。このふたつの動作を切り分けて自分のタイミングを計る。吉野が“二の溜め”と言う間合いを適切に取ることによって、インパクト時に過不足なくボールに力を伝えられるのだそうだ。
「『楽天のセンターと言えば吉野』って言われるように」
高校での実績を証明する、ドラフト後の研鑽を試す舞台には、分厚い壁が聳え立つ。楽天の外野は、今季の打点王・島内宏明や打率チームトップの岡島豪郎がいる。そこに18年の新人王・田中和基に守備の達人・辰己涼介、打力のある小郷裕哉ら、チームの将来を担う有望選手。おそらくは新外国人選手も加わり、ポジション争いが激化するだろう。
怖気づいた表情はない。「積極的にいきたいんで。そういう姿勢で殻を破っていきたいなって」と言い、吉野は続ける。
「どの方々も能力が高くて経験もあるんですけど、チームメートでありながらライバルでもあるんで、そこは絶対に負けたくないです。『楽天のセンターと言えば吉野』って言われるような選手になりたいです」
デビューが近づこうとしている。
楽天生命パーク宮城の歓声。その残響は今も吉野の耳を心地よくさせる。選手たちの登場曲も盛り上がる。もし、自分ならば――。
楽曲は決まっている。吉野は恐縮したように、タイトルを挙げた。
BANTY FOOT『交差点 feat. EXPRESS』。
「前に浅村選手が使用していた曲で……。自分ももともと好きで、浅村選手の動画を観ていたら『あ、あの曲だ』って。だから、被っちゃうんですけど、『交差点』にしたいです」
楽天とドラフト1位で契約したスター候補が、新たな交差点に立つ。
「楽天のセンターと言えば吉野」
東北とチームの象徴になる。そのために自分で道を選び、突き進む。迷いは、ない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。