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野球クロスロードBACK NUMBER
「浅村選手の動画を観ていたら『あ、あの曲だ』って」“相思相愛”だった楽天と吉野創士(ドラフト1位)…監督「運命的なものを彼は持っている」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2021/12/05 06:02
12月4日、初めて楽天のユニフォーム姿で登場した高卒ドラ1・吉野創士
「悪いなりにも練習はしていかなくてはいけないんで。改善点が見つからないまま練習しても自分の身にはならないし、何をしていいかわからない状態で1時間練習するより、課題に取り組んだほうが濃い時間を過ごせるんで。そこは心掛けていました」
黒坂は吉野の性格について、「あまりガツガツしていない」と言ったが、バッターとしての吉野はどこまでも貪欲なのである。
チームの勝利のために打撃を磨く。それはやがて、プロへの扉を開き、目標とする浅村に少しでも近づけることとなる――吉野の「ガツガツ感」はそこに向けられていった。
「浅村選手のようなバッターになりたい」
そのモチベーションは、いつしか「浅村さんと一緒に野球がやりたい。楽天に入りたい」という願いへと変わっていった。
黒坂監督「運命的なものを彼は持っているのかな」
浅村の動画をチェックする過程で、吉野は自然と楽天の公式YouTubeチャンネルも視聴するようになっていた。
そこには、原風景が映し出されていた。
自分が昌平への進学を決めたのは、厳しいなかにも選手を尊重する指導者がいて、上下関係を度外視したチームワークに魅力を感じたから。「ここなら才能を開花させられるかもしれない」と確信できたからだった。
「キャンプの練習とかを見ていても、きついメニューなのに、楽天のみなさんは笑顔でやられていて。他の動画でも上下関係がありつつもフレンドリーな雰囲気がすごく伝わってきて、楽しそうなチームだなって感じました」
かつて自分の恩師である野村克也が指揮した楽天に教え子が入団したことについて、黒坂は吉野の天命を実感していた。
「人との縁というか巡り合わせというか、運命的なものを彼は持っているのかな、と」
十字路で自らが信じた道を選択し、運命を引き寄せた吉野は来年から、憧れの選手がいる、いい雰囲気のチームでプレーする。
公には「1年目はしっかり体を作って」と謙虚に振る舞ってはいるが、本心の吉野はガツガツとした意欲に溢れている。
「ドラフトが終わって間もない頃は、体作りをテーマに挙げていたんですけど、実際にプロになるにあたって練習をしていると『それだけじゃダメだな』って。体作りも大切にしつつ、早く一軍の試合に出て、定着するくらいの気持ちがないといけないと思うんで」