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なぜ鍵山優真はGPイタリア大会で〈SP7位→逆転優勝〉を成し遂げられたのか? 演技中に何度も拳を握った理由「気合が湧いて、嬉しくて」 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2021/11/09 11:06

なぜ鍵山優真はGPイタリア大会で〈SP7位→逆転優勝〉を成し遂げられたのか? 演技中に何度も拳を握った理由「気合が湧いて、嬉しくて」<Number Web> photograph by Getty Images

GPシリーズ・イタリア大会にて、SP7位からの逆転優勝を果たした鍵山優真。

「本当に実力がある選手は必ずフリーで上がって来る」

 結局SP7位から、一気にトップに駆け上がった鍵山の優勝が決定した。

 奇跡の逆転、と言いたいところだが、サプライズはSPの失敗の方で、これが本来の鍵山の実力だ。スケート関係者の間では、「本当に実力がある選手は必ずフリーで上がって来る」とよく言われる。それにしても最終グループに入らなかった選手が優勝、というのはそうあることではない。

 筆者が取材してきたGP大会の中では、2006年カナダのビクトリアで行われたスケートカナダ以来のことである。不調でSP7位だったステファン・ランビエルが、SP1位だった高橋大輔、2位だったジョニー・ウイアー、3位だったトマーシュ・ベルネルらを追い越して、フリーで逆転優勝した。

「今夜、ここで起きたことは信じられないことでした」と感想を述べたランビエルの声は、まだ耳に残っている。そのくらい珍しいことであるのは、間違いない。

 トリノの会見では、鍵山はこう感想を述べた。

「自分が1位になったことをさっき知ったので、すごくびっくりしていて、今日は本当に優勝するためとか、いい点数取るためとかじゃなくて、ただひたすら頑張るということだけを目標にやっていたので、正直点数とか結果とか気にしていなくて。でも優勝できたことは嬉しく思っています」

「オリンピックでは逆転優勝はできない」

 だが今季の最大イベント、北京オリンピックではそう甘くないことはわかっている。

「オリンピックは本当にショート、フリーまとめないとと思っている。今回のように逆転優勝はできないと思うので、ショートからまとめていきたいと思います」

「今シーズンの最終的な目標がオリンピックで表彰台にのぼることなので、そのためには目の前の試合から、ある課題を一つ一つこなしていくことが大事だと思う。一試合一試合通して何か成長していると思いますし、それを積み重ねてオリンピックで最終的にノーミスしていい演技ができると思うので、今は目の前にあることだけに集中していきたいと思います」

 鍵山の次の試合は、この2週間後のGPフランス大会。ここでメダルを手にすれば、大阪でのGPファイナルに進出するだろう。そしていよいよ全日本選手権へと続いていく。今シーズン、鍵山がどこまで羽ばたいていくのか、見守っていきたい。

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