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“競馬大好き芸人”蛍原徹が明かす、一番忘れられない名牝は?「新幹線のデッキで聞いた『蛍原さん、ホクトベガ死んだ!』」
posted2021/10/12 17:05
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Keiji Ishikawa
「ベガはベガでもホクトベガ!」
この名実況が飛び出したのは、忘れもしない、1993年のエリザベス女王杯。武豊騎手が乗ってた人気のベガではなく、9番人気のホクトベガが勝ったレースです。僕は馬連を買ってまして、2着のノースフライトとの組み合わせは2万5000円もつきましたから、3連複も3連単もない当時としては、大穴中の大穴の的中でした。100円、200円しか買ってませんでしたが、ただただ気持ちよかったですね。そこから、ホクトベガへの思い入れが強くなっていきました。
僕は競馬は、若い頃からずっと穴党です。どのレースでもだいたい、競馬新聞をじっくり見て、印のあまりついていない人気薄の馬の中から、「どれが可能性あるやろな」という感じで、穴馬を探していくわけです。エリザベス女王杯でホクトベガを狙ったのは、枠も1枠で、最後インを突いてうまいこと伸びてくるんじゃないか、という予想でした。それが結果的にピッタリはまったわけですが、僕はいつも馬券を買う時、95%くらいは「来ない」と思ってるんですよ。穴も来ないけど、かといってグリグリの◎がいつも必ず来るとは限らないでしょ? だったら穴を買っとこうという考えです。
それに、アホちゃうかと思われるかもしれないですが、僕、極論すれば、買った馬が来なくてもいいんです。予想すること自体が楽しいですから。来たらラッキー、外れてもホンマくやしくない。だから、僕と一緒に競馬場行くと、全然くやしがらないんで、みんなびっくりします。ホクトベガの時も、「お、マジで。ホンマに来た」くらいの感じでした。もともと、95%来ないと思ってるわけですから。いや、買った馬が来るに越したことはないんですよ(笑)。
「蛍原さん、ホクトベガ死んだ!」
ホクトベガはその後、芝のレースでは勝ったり負けたり。それが、ダートを走ったら強い、強い。何連勝もして、地方で大差で勝ったり、大レースも獲った(96年南部杯)。ここまでダートに強かったんや、と感心しましたね。逆に言えば、こんなダートに強い馬がエリザベス女王杯も勝ったんや、これはすごいなと。きっかけは馬券でしたが、ホクトベガには、そうしたドラマ性に惹かれていったんです。