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「W杯優勝は不可能ではない」トルシエが認めた日本サッカーの可能性と、「FIFAランク1位は不可能だ」の理由
posted2021/10/02 11:02
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
フィリップ・トルシエインタビューの後編である。
話題はJリーグの《ビジョン2030》のなかのひとつである、「日本型人材育成システムで世界5大リーグに名を連ねる」ことが可能であるのかから、日本サッカー協会が掲げる「2050年のワールドカップ優勝」へと移っていく。
トルシエが日本の未来を分析し予測する。(全2回の2回目/#1から続く)
――それではプレーのレベルで、世界の5大リーグに入ることについてはどうでしょうか?
「プレーのレベルで世界の5大リーグに入るということは、具体的には……、今はNo.1がたぶんイングランドで、スペインとドイツ、フランス、イタリア。ではベルギーリーグは、Jリーグと比べてどうなのか。トルコやポルトガル、あるいはモロッコは……。
私が言いたいのは、それは十分に可能だが、代表チームとはまったく関係がないということだ。Jリーグが世界の5大リーグのひとつになっても――プレーのレベルでもヨーロッパの5大リーグと同等になっても、残念ながらアジアはヨーロッパから遠く離れている。日本人がフランスやイングランド、スペインで力を証明するのは容易ではない。
だが横浜F・マリノスや名古屋グランパス、ガンバ大阪が毎週末にヨーロッパのリーグで戦っても、彼らは1部に残留できる力を持っている。それは間違いない。日本で実践されているサッカーの内容を見れば、プレーのクオリティや全体の統一感、規律、組織……。私には何ら驚きはない。
Jリーグと日本代表のレベルの乖離
私は常々日本人選手は世界最高クラスだと言っている。テクニックや理解力の高さ、規律、戦術などの面でそうだ。とりわけテクニックは秀でている。そして総合的に見て日本が世界のトップ5に入るかといえば――私がここで言うのはあくまでもリーグのことであって代表のことではないが――答えはウィだ。Jリーグはすでに世界のトップ5にあると言える。少なくともトップ10に入っているのは間違いない。
だからリーグに関してはウィだがチームは……、マリノスがフランスチャンピオンやドイツチャンピオンになれるかと言ったらそれはまったく別だ。チームはまた別で、そこはしっかりと認識すべきだ。だがリーグそれ自体に関しては、組織などすべての面について日本はスペインやイタリアと同等であると言いたい。フランス人選手が日本のクラブに移籍したとき、ヨーロッパより日本の方が優れていると言っても決して不思議ではない。その点について私は確信している。イニエスタにも同じ質問をしてみればいい」