武蔵丸の辛口御免 Oh!相撲BACK NUMBER
“ご意見番”武蔵丸の苦言「白鵬よ、右ヒジで顔面を狙うのはいけない」「正代戦も元横綱の僕としては許せなかった」
posted2021/07/20 11:05
text by
武蔵川光偉Musashigawa Mitsuhide
photograph by
KYODO
千秋楽結びの一番は、横綱白鵬と大関照ノ富士の全勝対決。ひさしぶりに見る方も熱が入った一番だったね。白鵬の勝ちは勝ちなんだけれど、やっぱり右肘で顔面を狙うのはいけないよ。僕は以前から同じことをずっと言っているんだけど、思い切り顔にヒットしていて、あれは”かちあげ”という技ではない。照ノ富士をよく見ると、一瞬フラッとしていたもの。デカい照ノ富士だからまだ大丈夫だったけれど、相手によってはこの一発で相撲人生が終わってしまうくらいの、本当に危険なこと。十両の土俵でも、2日目の炎鵬対貴源治戦で、貴源治が炎鵬に脳震とうを起こさせたことがあった。ここ数場所で、たびたび脳震とうの問題があったでしょ? もう協会も「危険な違反行為として禁止」と、スパッとルールを決めちゃえばいいと思うよ。
45回目の優勝ですっ飛んでしまったかもしれないけど、14日目の正代戦の白鵬は、正代から遠く離れて、俵近くで仕切ってた。見ていて呆れたというか、もう横綱として恥ずかしいよ。元横綱の僕としては許せなかった。僕のなかにある「横綱の魂」が、新幹線に乗って東京にビューン! と帰っちゃったよ(笑)。せっかくひさしぶりに名古屋に来たのにさ。勝ちにこだわってのことだと、白鵬ファンは喜ぶかもしれないけど、古い相撲ファンには呆れてしまった人もいるんじゃないかな。よく白鵬は「相撲道」とか「相撲愛」を言葉にするけれど、もう言えないね。道も愛もないよ……。横綱は、自分のためにだけ相撲を取っていればいいわけじゃない。相撲界のためにも取る――もちろんお客さんもそうだし、たくさんいる下のお相撲さんたちに、見本を見せなきゃいけない立場なんだ。
「(三賞を)なんでこの子にはあげないの?」
照ノ富士は、横綱に昇進だね。よかったよ、おめでとう! 千秋楽の一番は、まわしを浅めに取ってしまったからやられちゃったけど、もっと肩を入れていけば、食わなかっただろうな。これからは横綱として、一生懸命に自分の持てるものを出し切っていけばいいだけ。もともと力は持っていたし、序二段からここまで戻る過程で、気持ちもどんどん強くなっていったんだろう。来場所は白鵬を倒しての全勝優勝を目標にして頑張ってほしいと思うよ。