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「9秒95より速く走るためには…」100m山縣亮太、日本新記録を引き出したコーチが日本選手権に向け考えていること
posted2021/06/23 11:04
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kiichi Matsumoto
6月6日、鳥取市で行われた陸上の「布施スプリント」。男子100mで山縣亮太が9秒95の日本新記録で優勝した。
山縣はリオデジャネイロ五輪の4×100mリレーでの銀メダルを始め、数々の活躍とともに日本短距離界を牽引してきた。近年は怪我の影響に苦しんできたが、五輪選考の対象レースとなる日本選手権の前哨戦で真価を発揮。東京五輪参加標準記録も突破し、本番の日本選手権へ向けて、大きな糧を手にしたことにもなる。
この好記録を支えたのが今シーズンからコーチとなった高野大樹氏である。
「今年の2月からコーチになりました。相談したいからということで、飲食店で会って『なんだよ、あらたまって』みたいに話していると、『高野さんの力を借りたい』と」
高野氏は山縣が練習する慶應義塾大学のグラウンドで、プロのコーチとして学生とその他の選手たちの指導にあたっている。山縣とはグラウンド上で挨拶し、言葉を交わす間柄だったが、山縣の言葉に驚きを隠せなかったと言う。
「まじ? 僕でいいのか、と確認した上で、快諾しました」
パラ競技に始まった指導者歴
山縣は以前、コーチをつけたことはあるものの、基本はコーチをつけることなく自ら強化やトレーニングを組み立ててきた。高野氏は現在32歳。自身も陸上選手であったが、決して華々しい実績を残したわけではない。もともとはパラリンピック陸上競技で指導者としてスタートした経歴を持つ。そんな中での依頼であったため、高野氏には驚きだった。
ただ振り返れば、そこには「必然性」があった。
高野氏は中学から大学まで、110mハードルに打ち込んだ。パラ陸上に出会ったのは大学3年生の頃だったと言う。