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遠藤渓太がウニオン完全移籍も“ハッピーではない”と語る理由 「F・マリノスでプロ1、2年目に戻ったような感覚なんです」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2021/05/21 06:01
ウニオン・ベルリンへの完全移籍を勝ち取った遠藤渓太は東京五輪を前にしてこの移籍をどう捉えているのだろう
「うーん、F・マリノスで似たような時間を過ごしたことがあったからですかね。もともと、僕の場合は下馬評が低いところからプロになったので」
――マリノス時代の周囲からのアドバイスを思い出したりしたのですか?
「僕がF・マリノスで試合に出られなかったときの大津祐樹選手(現ジュビロ磐田)の存在は頭にありました。大津選手はかなり歳上なのですが(学年が8つ上)、あの頃は若手の僕よりも試合に出られないような状態でした。それでも、ネガティブな空気は一切出さず、練習で手を抜くこともなかったですね」
――そして、2月20日のフライブルク戦、最後の14分間プレーするチャンスを得ました。
「あの試合は、なんで使われたのだろうという感じだったんです。1-0でリードしていた場面だったのですが、それまではリードしているときはあまり出られなかったので意外でした」
それまでの遠藤は、劣勢の流れを変えたいときか、フォーメーションを変えるタイミングで送り出されることが多かった。
だが、いつもと違うタイミングで起用された試合で、遠藤は守備で強烈なプレスをしかけていった。それに焦った相手選手がバックパスをしようとしたところを味方FWのムサが奪い、決定機が生まれた。1-0でリードしながらも相手の反撃を受けていた嫌な流れを、あのプレスで断ち切ったのは確かだった。
そして3月13日のケルン戦で、初ゴールを決めた試合以来となるスタメンを勝ち取ることになる。
しかも、アウトサイドのスペシャリストとしてプロのキャリアを過ごしてきた遠藤に与えられたのは、左のインサイドハーフのような役割だった。ポジションを背番号で表すことの多いドイツでは「8番」と呼ばれるポジションだ。
8番で結果を出さないといけない覚悟
――あのポジションには驚きましたか?
「練習では8番のポジションをやっていたので、ビックリすることはなくて。ただ、結果を出さないといけないという覚悟はもっていました」
――試合開始時から飛ばして、前半のベストプレーヤーだったことは間違いなかった。次々と決定機になるクロスを送り込んでいて、あとは味方が決めるだけという状況でした(後半16分で交代)。
「積極的に仕掛けられたし、ミスも少なかったと思います。チーム内には、8番をやる選手で、自ら仕掛けたり、どんどん縦に出て行く選手はいないので、あのポジションでも自分の個性を表現しようと考えていました」