プロ野球PRESSBACK NUMBER

首位独走・阪神タイガースの裏で再評価される“鉄人の眼力”…金本知憲が描いていたドラフト戦略「最低3~5年後を見ないといけない」 

text by

豊島和男

豊島和男Kazuo Toyoshima

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2021/05/14 00:00

首位独走・阪神タイガースの裏で再評価される“鉄人の眼力”…金本知憲が描いていたドラフト戦略「最低3~5年後を見ないといけない」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

選手たちを鋭い視線で見つめる金本知憲前監督(写真は2017年)

 ここで開幕スタメンに名を連ねたメンバーを紹介する。

 ジェフリー・マルテ、ジェリー・サンズの外国人選手を除くと、開幕スタメンの中で最年長は捕手の梅野隆太郎で29歳。最年少は外野手の佐藤輝明で22歳だ。助っ人も含めたスタメンの平均年齢は27.3歳。確実にチームが若返ったことは数字でも裏付けられている。この新生タイガースを支える若手選手の多くが金本監督時代に入団してきた。

<2021年阪神の開幕スタメン>
(中)近本光司/26歳
(二)糸原健斗/28歳
(一)マルテ/29歳
(三)大山悠輔/26歳
(左)サンズ/33歳
(右)佐藤輝明/22歳
(捕)梅野隆太郎/29歳
(遊)木浪聖也/26歳
(投)藤浪晋太郎/26歳

※年齢は開幕戦(3月26日)時点

「他球団の情報に振り回されるようなことになってしまうとおかしくなる。信念をもって、監督の力を借りて。選手を見る目は、慧眼(けいがん)であるし、十分フロント、スカウト陣と意見を合わせて(やっていく)」

 当時の坂井信也オーナーはドラフト戦略においても金本に全幅の信頼を置いていた。歴代オーナーの中でも突出してドラフト候補となるアマチュア選手にも精通。毎年、ドラフト会議では将来を見据えた指名と、即戦力として指名する2つのバランスが重要となる。勝敗の責任を負う現場トップの監督としては即戦力となる選手の指名を求めたがる傾向にあるのは当然だ。しかし、金本の考えは監督就任当初から一貫。将来を見据えた指名を最優先に、まさに球団と一丸となり戦略を練った。

整った選手よりも「可能性」

「最低3~5年後を見ないといけない。(生え抜き選手中心で勝つためには)1、2年では難しいと思う。でも、目指すところはそこだと思っている。いい素材を獲ってきて鍛えて育てて、そこを目指してほしいと(球団からも)言われている。僕もそう思う。そのために(監督に)選ばれたとも思っているから。便利屋といいますか、そこそこの整った選手というよりは、やっぱり将来、大きな大木になり得る、可能性をもった選手を指名していきたい」(金本)

 監督としての意向などをトップダウンでスカウトに伝えることは簡単なことだ。しかし金本は舞台裏で動いていた。ドラフト会議の前夜には必ずホテルの自室で球団とスカウトが中心となり、リストアップした候補選手の映像を深夜までチェック。その作業を夜明けまで続けて本番に臨んでいたという。

 また、クロスチェックを目的に球界の人脈を生かして監督自らが他球団のスカウトに「この選手は、正直なところ、どう評価しています?」などと冷静な評価を求めることもあった。

 ペナントレース中の多忙な合間を縫って、実際に候補選手の試合を極秘視察していたこともあった。時にはトレーニングの専門家にも助言を仰ぎ、候補選手の筋肉量など肉体面などの細かい数値もチェック。阪神の歴代監督の中でも、ここまでドラフト戦略に時間を割いた監督は少ない。球団にとって長年の課題でもあった「チームの中心となる生え抜き選手」の獲得、育成に尽力した。

「1、2年では難しいと思うが、(生え抜き育成の見本として)目指すのは球団もそこ(広島)だと思っている」(金本)

【次ページ】 熟成する金本チルドレン

BACK 1 2 3 NEXT
#阪神タイガース
#金本知憲
#大山悠輔
#佐藤輝明
#梅野隆太郎

プロ野球の前後の記事

ページトップ