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“セ・リーグなら活躍できる”…巨人・ウィーラーの快進撃を原辰徳監督と楽天・石井一久GMが“予感”できたワケ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/05/07 11:03
5月3日の広島戦で、森下から勝ち越しのソロ本塁打を放ち、ベンチで歓迎されるウィーラー
コロナ禍を乗り越え、外国人選手の厳しいポジション争いをサバイバルしての活躍に、ウィーラーがこう語ったのは3日の広島戦後だった。
こんな今季の困難も大きな試練だったが、ウィーラーにとっては、昨シーズン中の楽天から巨人への移籍という出来事が、彼の日本での野球人生の大きなターニングポイントになったのは事実である。
2018年、バットが下降線をたどり出した
2015年から楽天でプレーするウィーラーは2年目の16年には140試合に出場して27本塁打、88打点をマーク。さらに17年は31本塁打82打点とチームの主軸として文句ない働きを見せてきた。加えて持ち前のポジティブなプレースタイルとチームメイトにも溶け込んだムードメーカーとして、チームの評価も高く、長く日本でプレーする下地をしっかり作り上げていた選手でもあった。
だが、である。
肝心のバットが徐々に下降線をたどり出したのは18年のシーズンからだった。この年は6月に盗塁を試みた際のヘッドスライディングで左手人差し指を剥離骨折して約2カ月間にわたって戦線離脱したこともあり、シーズン15本塁打と低迷。19年も6、7月の月間打率が1割台に低迷し、117試合で19本塁打、67打点と復活はならなかった。
そして20年。前年に33本塁打を放ったジャバリ・ブラッシュ外野手とオリックスから移籍してきたステフェン・ロメロ外野手との争いに敗れて開幕から二軍暮らしが続いていた。
そこで巡ってきたのが6月25日に発表された巨人の左腕・池田駿投手との交換トレードでの移籍というチャンスだったのである。
はっきり言って、この時点でウィーラーのその後の活躍を予想していた球界関係者はそうは多くなかったはずだ。
トレード成立の巨人と楽天の“張本人”とは?
だがトレードを成立させた巨人と楽天の2人の張本人たちは、ウィーラーの爆発の可能性を、ある意味、そのときから“予感”していたのである。