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「能力は村上宗隆、安田尚憲に匹敵する」(スカウト談)…ドラフト1位候補の超高校級大型スラッガー阪口樂とは何者か?
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2021/04/30 11:02
スカウトたちがこぞって注目する岐阜第一の大型スラッガー阪口樂。甲子園出場はまだ一度もないが、その期待値は大きい
一方で秋は悔しさも味わった。センバツ甲子園への出場確実圏内一歩手前の東海大会準決勝で県岐阜商に0-6で敗戦。自身も東海大会通して10打数無安打。外野が極端に下がって守る“阪口シフト”や「ストライクは1試合に1、2球程度」という警戒された配球でいつもの打撃を崩され、「自分の力の無さを痛感しました」と悔しそうに振り返る。
その分、この冬は「あの秋があったからこそ課題が明確に分かっていたので、やりやすかったです」と話すように、下半身中心の筋トレと、少ないストライクを確実に仕留められるようにレベルアップに取り組んできた。その成果からか、今年に入ってからは逆方向への本塁打も増えている。将来の可能性を広げるために挑戦した三塁手の守備も難なくこなし、その対応力の高さも光る。
中学時代は無名「ホームランは1本しか記憶にない」
そんな阪口だが、京都にいた中学時代(オール山城ヤング所属)までは、本人いわく「打撃の確実性が低くて」と、ヤングリーグの関西選抜止まり。今の姿から想像がつかないが、そこまで名前の知られた存在ではなく「ホームランは1本しか記憶にない」という。強豪校からの誘いも片手で数えるほどだった。
自然豊かな京田辺市から岐阜にやってきた理由は、田所孝二監督の存在が大きい。田所監督は福知山成美高校の監督として、1999年に京都北部勢として初めて夏の甲子園に出場し、春夏通算で6回の出場を誇る。NPBにも桑原将志(DeNA)や島本浩也(阪神)ら5人を送り出した。2014年秋からの1年半は同校の校長職に専念していた関係で野球の現場からは離れていたが、16年から岐阜第一高校を率いている。
そんな田所監督の野球を阪口は「のびのびとした自主性の中で、自分で考えて野球ができます。上で野球をやるなら、自分で考えてやった方が伸びると思います」と話す。1年春から出場機会をもらうとともに自ら考えながら打撃を向上させてきた。