緩急に惑わされることなく食らいつき……

　牧は興奮しテンションが上がったというが、そんな素振りを一切見せることなく落ちついた風情に終始する。初回に1アウト一塁で打席に入ると、2球で2ストライクと追い込まれるが、アウトローのスライダーを見極めると、甘く入ったスプリットを逆方向へ打ち返した。さらに4回の第2打席では、ストレートとカーブの緩急に惑わされることなく食らいつき、高めにきた真っすぐを弾き返しツーベースヒットを放っている。調整段階とはいえ田中相手にマルチ安打を放った姿は頼もしく、牧自身「すごく自信になった」と語っている。

　またプロになったルーキーがまず苦戦するのが、ストレートの強さと変化球の鋭さ、そしてゾーンの厳しさなのだが、このあたりに関しては日々研鑽を重ねているという。

「たしかに真っすぐは自分が思っているよりも差し込まれていますし、変化球は思った以上に曲がる。またこのコースでストライクを取るのかと戸惑う時期もありましたが、このあたりはキャンプの前半で対処しました。まず真っすぐで振れないと話にならないので、どうやったら打てるのかと考えた結果、ピッチャーのタイミングに合わせるのではなく、自分の始動を早めることを心掛けるようにしています」

坪井・田代コーチからアドバイスされた「心構え」

　スタンスが広めのどっしりとした体幹の強さを感じさせるバッティングフォーム。トップを決めた状態から、軸足に体重を乗せる下半身始動のスイング。学生時代からほぼカタチは変わらないが、プロ入りしてから若干、脚を上げるタイミングが早くなった。これで速いストレートに対応しているというが、同時に変化球も追えているのだから非凡なものを感じてならない。

中央大時代の牧©BFP/AFLO

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　ただゾーンに関してはオープン戦が進むにつれ狭くなってきていると感じており、今後改善が必要だという。

　坪井智哉打撃コーチからは技術的なことよりも「新人は第1打席の1球目にとにかく集中するように。1年目は決してチャンスは多くないので代打で出た場合、その心構えが必要になる」とアドバイスをもらい、田代富雄巡回打撃コーチからは「自分のバッティングを見つけ、それを崩さないように」と助言された。つまり、フォームに関しては基本的に牧の自由にやらせてもらっている。

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