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2020年のオリックス、借金23最下位も実は弱くなかった? 伸びしろを感じるワケ【記録で振り返り】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/06 11:02
初の首位打者に輝いた吉田正尚。山本由伸とともに投打の軸はいるだけに、チームの底上げさえされれば……
野手陣では、中嶋監督代行は二軍で4割近い打率を残していた杉本裕太郎を中軸で起用し、打線の厚みが増した。また育成上がりの新人の大下誠一郎を抜擢。9月15日の一軍デビュー戦で初打席初ホームランの派手なデビュー、以後もムードメーカーとして存在感を示した。
二軍監督だった中嶋監督代行だからこそ
端的に言えば「空気が変わった」ということか。
2019年もオリックスは最下位だったが、西村徳文監督は留任。そもそもロッテ出身でオリックスには縁の薄い監督だったが「若手が育っている」ことを理由にもう1年務めることになった。しかしチームの士気は上がらなかったようで、球場には沈滞ムードが漂っていた。
その空気が二軍監督で、チームの実情をよく知る中嶋監督代行になって一掃されたのだろう。
端的に言えばオリックスは「底を打った」とは言えよう。ただし上昇基調ではあろうが、まだまだ上位を狙うには戦力不足なのは間違いない。
吉田正尚の「17敬遠」が物語る課題
<今季のRC(Runs Created/打者の総合指標)10傑>
1吉田正尚 95.75
(408打143安14本64点8盗 率.350)
2T-岡田 49.75
(328打84安16本55点5盗 率.256)
3ジョーンズ 40.97
(302打78安12本43点1盗 率.258)
4福田周平 36.24
(260打67安0本24点13盗 率.258)
5安達了一 35.35
(266打77安2本23点15盗 率.289)
6モヤ 27.44
(164打45安12本38点0盗 率.274)
7伏見寅威 20.85
(189打49安6本23点0盗 率.259)
8若月健矢 19.48
(192打46安3本19点2盗 率.240)
9ロドリゲス 19.46
(193打42安6本25点1盗 率.218)
10大城滉二 15.50
(251打52安1本14点7盗 率.207)
今季の吉田正尚はパ・リーグではソフトバンクの柳田悠岐に次ぐ活躍で、初の首位打者も獲得したが、オリックスにはこれに続く打者がいなかった。相手投手のマークは吉田正に集中し、リーグ最多の17敬遠を記録している。
本来であればMLB通算282本塁打の大物外国人、アダム・ジョーンズが吉田正と強力タッグを組むはずだったが、時折大当たりは見せるものの集中力がない打席も多く、期待外れに終わった。
外国人ではむしろスティーブン・モヤに期待したい。2019年開幕後に中日から金銭トレードでやってきた選手だが、今季は9月以降スタメンに定着し、勝負強い打撃を見せていた。当たりだすと手が付けられない印象がある。
2010年の本塁打王、T-岡田は長い低迷が続いていたが、2020年は故障も癒えて3年ぶりに規定打席に到達。しかし左投手に.200と弱く、信頼を勝ち得るには至らなかった。
今、打線に欲しいのは「若手の中軸打者」だ。