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東海大一・サントス、武南・ 江原、岐阜工・ 片桐…得点王3人が語る選手権秘話「バナナシュートは神様の合図で」
posted2021/01/10 11:02
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Hideki Sugiyama
〈1〉アデミール・サントスの選手権
百年の歴史を誇る冬の選手権には、記憶に残る伝説のゴールがある。中でも1986年度、東海大一に初出場初優勝をもたらしたアデミール・サントスのフリーキックは、不朽の名作として語り継がれる。
ブラジル出身のサントスは幼いころに父を亡くし、兄が入院中に命を落とすという過酷な少年時代を過ごした。学校とサッカーを掛け持ちしながら、溶接、くつ磨き、アイスクリーム売りなどなんでもやった。
ジュベントスに所属していた14歳のとき、彼は日本人留学生と運命の出会いを果たす。その名は三浦知良。ラッツ&スターのヒット曲「め組のひと」を、いつも口ずさんでいた。サントスは17歳の若さで日本に渡るが、仲介をしたのはカズの父である。
日本には想像を絶する厳しさの「部活サッカー」が待っていた。
「めちゃくちゃきつい練習をした翌日に2試合やって、終わると窮屈なマイクロバスで長時間移動。信じられなかったよ」
東海大一の“チーズとネズミ”大作戦
1年目の選手権は、静岡県予選決勝でPK戦負け。外したのはサントス。この試合に勝った清水商が、日本一になった。
翌年度、東海大一は県予選を勝ち抜き、初の全国へ。4試合連続3-0という快進撃で、決勝に勝ち進む。その攻撃力を支えたのが、“チーズとネズミ”大作戦だった。
「ぼくは監督に自由に動いていいと言われていた。相手がぼくを厳しくマークすれば、フリーの味方を使う。そう、ぼくはネズミを集めるチーズになったんだ。マークが分散したら、今度は自分が決めればいい」
東海大一は決勝で同じく初出場の国見と激突。この試合で伝説のゴールが生まれる。
0-0で迎えた前半32分、正面22m地点でのフリーキック。サントスの左足から放たれた一撃は、壁7枚の左端を越えて急激に沈み、ネットに突き刺さった。