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「ロッテに弱い」ソフトバンクの反撃 “アクシデント続き”東浜巨が急に勝ちまくっているワケ
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2020/10/14 17:35
10月10日のロッテ戦、8回1失点と好投した東浜と捕手の甲斐。これで自身は先発で5連勝となった
雨の日の仙台とは、前述した9月10日のイーグルス戦のことだ。試合開始からずっと雨が降り、2度の中断。試合終了は23時38分だった。
ただでさえ一軍復帰戦という難しいマウンドの中、1度目の中断は東浜がマウンドに上がったばかりの一回裏途中だった。37分間も待って雨に濡れたマウンドに戻る。四球で塁を埋めながらも初回はなんとかゼロに抑えたが、二回には岩見雅紀にソロを許すなどして2点を失った。
三回以降は立ち直り、何とか粘って5回2失点で白星を手繰り寄せたのだった。
「足元や指先も滑って上手くいかないことばかり。だけど3回、いや4回だったかな。吹っ切れた場面があったんです。(ストライク)ゾーンの中でリズムよく投げればいいんだ、と。そこがきっかけですね」
もちろん、その心構え一つだけで全てが改善されたわけではない。今季序盤は苦しみながらもどうにか毎試合ゲームメイクをして、「自分が培ってきたものが出ている」とも話す。また、昨年のリハビリの苦しみと悔しさも間違いなく原動力になっている。
沖縄で看護師をしている母親のために
そして、もう一つ。
「今年は特別なシーズン。一生忘れることのない1年になると思います」
東浜の母は、故郷の沖縄で看護師をしている。そのほかの親族にも医療従事者がいるという。
「今年のようなイレギュラーなことは過去にないし、これからもないと思います。当たり前にできていたことができず、不便な思いもしました。そのなかで自分はやっぱり野球が好きなんだなと、あらためて気づくこともありましたし、何よりもマスクや消毒液が足りなかった時期でも最前線で治療に当たってくれて、今も懸命に戦っている医療従事者の人たちには頭が上がらないです。そういうシーズンだからこそ、最後に勝って終わりたいです」
東浜の力投で、天と地の狭間の戦いに勝ったホークス。翌日の3戦目は工藤監督が「惜しみなく注ぎ込む」と宣言していたとおりに、7人の投手がマウンドに上がり完封リレーを成し遂げた。首位攻防戦は2勝1敗で、ホークスが今年初めてマリーンズにカード勝ち越しを決めた。
これから刻一刻と減っていく残り試合。ホークスとマリーンズの直接対決は10月27日~29日、11月3日~5日とまだ計6試合もある。
いずれも火曜日から木曜日の3連戦だ。工藤監督はローテ再編を示唆している。東浜は週末から週前半へ変更となり、もう一人の投手陣の柱である千賀滉大とともに真の天王山に臨む案が有力だ。
パ・リーグの首位攻防からは目が離せそうにない。
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