マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
野球を才能以外の武器で勝つ方法。
社会人名門・東芝で聞いた面白い話。
posted2020/03/06 11:35
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
「ルール上の“ストライクゾーン”っていうものに、そんなにこだわる必要もないと思うんです。選手ひとりひとり、持っているスイング軌道っていうのが違いますから」
社会人野球の強豪・東芝の四国・松山キャンプ。
バッティング練習を見つめながら、大河原正人アナライザーの「打撃論」が続く。
「レベルに近い軌道でスイングしたい者もいれば、ちょっとアッパー気味に打ちたい選手もいる。それぞれに得意なゾーンがあるわけで、そこがその選手のストライクゾーンだと考えればいいんじゃないですか。もらった! って確信の持てるコースは、たとえルール上のストライクゾーンから外れていても、その選手にとってはストライク。そういう考え方でいいと思います」
それが、本当の「攻める」という意味なのかもしれない。
「ただし場面によって、相手の投手に球数を投げさせたいとか、コントロールの定まらない投手を苦しめたいとか、ルール上のストライクゾーンでボールを見極めてほしいこともありますから、バッターは“2通り”のゾーンを用意しておく必要があります」
ボールがおいしい、ということも。
大河原アナライザー自身が現役の時には、ボールゾーンに“おいしい”ボールがあったという。
「投げ損じのスライダーやフォークが、肩の高さあたりにフラフラっと入ってくることがあるんですよ。そういうのっていわゆる抜けたボールだから、力がないんです。ヨッシャー! てなもんですよ」
手にしていたノックバットで、豪快に一閃。フルスイングの「ビュン!」という音に、まだまだバリバリの“現役感”が残っていた。
午後の練習は紅白戦である。
これが、なんとも興味深い時間になった。