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強さの要因は「厚底」だけではない。
哲学者・キプチョゲのマル秘ノート。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKYODO

posted2020/02/09 20:00

強さの要因は「厚底」だけではない。哲学者・キプチョゲのマル秘ノート。<Number Web> photograph by KYODO

2019年10月12日の特別レースで非公認ながら、男子史上初の「2時間切り」を達成したエリウド・キプチョゲ。

公式レース12回出場で11回優勝。

 ただ、厚底シューズだから記録につながった、とはあながち言えない。

 何よりもキプチョゲの強さにこそ、理由がある。

 公式レースは計12回出場。2度目のマラソンとなった2013年のベルリンマラソンで2位になった以外はすべて優勝。2018年のベルリンマラソンで2時間1分39秒の世界記録も樹立している。

 まさに最強ランナーと言ってよいだろう。キプチョゲを中心に、男子マラソンは進んできたと言って過言ではない。

読書もランニングにいかす。

 これまで国内外のメディアの取材に応えてきた。

 そこから浮き彫りになるのは、キプチョゲのストイックな姿勢と速く走ることへの探求心だ。

 例えば、トレーニングでは持てる力の「80%」までにとどめるという。

 レースで重要なのはフィジカルとメンタル、それぞれ半分の割合だとキプチョゲは考えるが、レース当日、100%に持っていくために最適だと考えたのが、80%である。

 それは決して感覚的なもの、思いつきのような類ではない。

 キプチョゲは練習の記録を欠かさず、ノートにつけていることも明かしている。

 しかも、十数年におよび、やめることなく継続して行なってきた。そしてつけたノートを振り返り、分析し、トレーニングの方法、レースへの調整の仕方など、自身のスタイルを築いてきた。

 記しているのは練習ばかりではない。読書家として知られるキプチョゲは、数々の書籍に目を通し、印象深かったことなどを引き写してきた。それを自身のランニングにいかそうと努めてきた。

【次ページ】 「哲学者」と形容されることも。

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