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館山昌平「野球は遊びの延長だった」
小中学生の怪我のリスクを考える。
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph bySports Medical Compliance Association
posted2019/12/20 08:00
小中学生の指導者への新たな評価基準となる「ベストコーチングアワード」。第1回となる今年度は全国41チームの野球チームが表彰された。
学童期の怪我が大きなリスクに。
さらに甲子園常連校の数字を見ると、学童期に肘痛を経験していない高校生の肘痛発症率は10%程度に留まったのに対し、小中学生時に肘痛を経験している高校生の再発症率は46%にまで達した。つまり、学童期で発症した障害がその後の怪我に大きく影響することがわかった。
「ジュニア期の育成は難しい。故障はゼロにならないが、怪我をせずにどうやってうまくなるかを考えることがこれからの指導者に求められる。プレーヤーズファースト、スポーツパーソンシップを改めて見直すことが大切だと考えます」(古島医師)
勝ちたい、うまくなりたいと願う少年少女たちは、時にリミッターを外してしまうことも多く、後になって痛みを訴えることがほとんど。いち早く痛みを察知するコミュニケーション、リカバリータイムの大切さを説いた。
ヤクルト近藤「もっと早く気付いていれば」
今回の授賞式には古島医師らのような専門家とともに、現役・OBのプロ野球関係者たちも参加。それぞれの経験をもとに、学童野球へアドバイスを送ったのも印象的だった。
過去に肘を4度手術した経験を持つヤクルト・近藤一樹投手は、リスク管理の重要性を語る。
「学童の時代に離断性骨軟骨炎を発症しまして、それを気づかずやっていたのが原因。プロ入り後の2011年に初めて肘が悪いんだなと気づいた。もうちょっと早くから怪我の知識を持っていれば、4度も手術しなくとも復活できたのかもしれない」
小学生の野球教室に参加する解説者・野村弘樹氏も「子どもたちの保護、練習や指導方法など、チームによってカラーがまったく違う。まずは指導者に(現状を)理解してもらう必要がある。何事も“過ぎない”ことが大事」とコメントした。聞けば、自身の息子も中学2年時に離脱性骨軟骨炎を発症し、手術を行ったのだという。だからこそ、学童期の指導について「リスクはまざまざと感じている」とも話していた。