ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
トミー・ジョン手術から育成契約。
DeNA田中健二朗が目指す復活の日。
posted2019/11/24 11:50
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Nanae Suzuki
横浜DeNAベイスターズの秋季キャンプ。投手陣は横須賀の二軍施設で汗を流していた。そのなかで人一倍真剣な表情で黙々とウェイト・トレーニングに励んでいたのが田中健二朗だ。苦しい表情で下半身を痛めつけていた。
プロ12年目の中継ぎ左腕。しかし今シーズンは8月にトミー・ジョン手術を受けることになり、人生で初めて左肘にメスを入れることになった。そして11月13日に行われた契約更改では育成契約になることが球団から発表された。
その翌日、田中に会いに行った。昨日の今日のことだったのでどんな様子なのか心配だったが、田中の表情は思いのほか落ち着いており口調も快活だった。
「手術はしましたけど、じつはあまりピンチだとは思っていないんですよ。むしろ今は時間をいただけた、という思いの方が大きい。将来、自分の人生を振り返ったとき、あのときリハビリしてきて良かったと思えるような時間にしたいなって」
どこか達観した雰囲気のある田中。野球人生を左右する選択を迫られ、決断し、信じる道を突き進む人間ならではの逞しさがそこにはあった。
左肘に感じたことのない“張り”。
今季は1月の自主トレ中に股関節の痛みを感じ、春季キャンプは二軍での調整から始まった。キャリアのある田中からすれば開幕に間に合えばいいと焦りはなかったが、ゲームに出始めた3月ぐらいからこれまで感じたことのない張りを左肘に覚えた。
「最初はキャンプ中に投げておらず久々だからこんなもんかなと思っていたのですが、その後、何をしても良くならないし、投げれば投げるだけ張りは増してゆき、だんだん力が入らなくなっていきました。ケアはつづけていたのですが、ある日、ゲームで投げた後に肘の筋が切れそうな感覚があったんです。強く引っ張られているようで、無理して投げたらこれは切れるんじゃないかと……」
医師に診断を受けると、左肘内側側副靱帯損傷だということがわかり、トミー・ジョン手術を勧められた。幼いときから投げてはきたが、これまで肘の大きな故障は経験したことがなかった。