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二軍から復帰の戸柱恭孝。屈辱的な
状況を支えた家族と野球への思い。
 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph byKyodo News

posted2019/09/01 09:00

二軍から復帰の戸柱恭孝。屈辱的な状況を支えた家族と野球への思い。<Number Web> photograph by Kyodo News

8月29日のヤクルト戦で7回1死満塁のピンチを併殺で切り抜けベンチに戻る戸柱(左)とピッチャーの石田。

「なにが嫌で、何を待っているのか」

 長いファーム生活。横浜スタジアムの熱狂とは異なる土煙舞うグラウンドで、戸柱はマスクをかぶり「感性を磨く」作業を続けた。

「とにかく打席に入っているときのバッターの反応をよく見ましたよね。なにが嫌で、なにを待っているのか。微細な変化も見逃さない。あとはピッチャーが使えるボールを考慮して天秤にかける。昨年から今年にかけファームの試合にはかなり出させていただきましたし、その辺が今になってようやくつながってきたのかなと」

 そしてチャンスは訪れる。7月末に伊藤光が負傷により登録抹消されると戸柱は一軍へ昇格する。同僚の嶺井博希と併用され、今季8月だけを見ればここまで12試合でスタメンマスクをかぶり6勝6敗(データは8月29日現在)と踏ん張っている。とくに8月17日の広島戦では3安打を放ち今季初のお立ち台に上がると、翌18日の試合では今永昇太を見事にリードし140球完封勝利に導いた姿は頼もしく映った。

再び“いぶし銀”の光を放ちはじめる。

「これまでチームを支えてきた(伊藤)光さんが怪我をして僕にチャンスがまわってきた。チームの勝利に貢献するために考えたのは、自分がやれることを当たり前にやろうって。ファーム生活は長かったですが、そのための準備はしてきましたから」

 課題だったリードに変化が見られ、戸柱は再び“いぶし銀”の光を放ちはじめる。ベースとなる安定の配球に加え、ときに大胆に、またときには繊細にピッチャーをコントロールできるようになった。その点についてラミレス監督も評価している。

「配球の部分でかなりの向上がみられます。もちろん人間ですからミスはするのですが、以前の戸柱はそのミスが多かった。ただ、それは確実に減っている。キャッチャーとして理解しておかなければいけないのは、自分の配球が悪くて打たれたのか、あるいはピッチャーが失投して打たれたのか、それとも配球も完璧でピッチャーのボールも最高だったのにバッターが優れていて打たれたのか。こういった部分で戸柱の理解度は高まっている」

【次ページ】 「そこへ投げさせた自分が悪い」と考える。

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