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<特別対談 前編>
室屋義秀(パイロット)×小山宙哉(漫画家)
「『ガンダム』と『スラムダンク』に憧れて」 

text by

別府響(文藝春秋)

別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu

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photograph byTadashi Shirasawa

posted2019/07/30 11:00

<特別対談 前編>室屋義秀(パイロット)×小山宙哉(漫画家)「『ガンダム』と『スラムダンク』に憧れて」<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa

余計なことを考えて、新しいヒントを。

室屋 その辺は飛行機競技でも似ているかもしれません。それこそ漫画を読むとか、自分の興味のあるところで遊んでいたりすると、意外といろんなものが得られたりすることもあって。そういうのって結構、競技にも参考になりますね。例えば去年はレースの成績が悪かったんですけど、そういうときは『宇宙兄弟』を読み返してみる。それで「こういうことをするといいのかもしれないな」とか「どこかで酸素カプセルにでも入ろうかな」とか思ったり(笑)。一見すると全く関係がなさそうですけど、そういうことから調子を上げるヒントをもらっているような気がしますね。飛行機のことは結局、どこかでずっと考えているので。

小山 漫画もそうなのかもしれないですね。余計なことを考えていくことで、実はそこから新しいヒントが連想されていたりする。そういう部分から新しいことが創造されたりするので、それも集中しているといえば集中しているということなのかもしれません。

室屋 集中力というのは課題ではあるんですけどね。10G以上の加圧がかかった状態で、操縦桿をミリ単位でどうやってコントロールするのかが大切になるので、肉体的な要素ももちろんですが精神的にも集中の状態で操作の精度がグッと変わってくる。本番中にどこまで自分の実力を出せるのかという意味では、いろんな挑戦がありますね。2010年くらいからは、メンタルコーチについてもらっていろんな取り組みをしています。それまでは周りもみんな「集中しろ!」と言うんですけど、どうやって集中したらいいのか、誰も教えてくれなかったので(笑)。

自分の意識がどこにあるかを把握する。

小山 具体的にはどういうトレーニングがあるんですか?

室屋 やっぱり自分の意識がどこにあるかを理解することですよね。意識はバラバラとしていて、多くは不必要なことを考えている。その意識がどこにあるのかを把握できるようにする。そして考えていることを削ぎ落としていって、なるべく同じところに意識を置いておくようにする。いろんなことが頭に浮かぶんですけど、それを「流して」あげる。完全に消すことは難しいので、不必要な要素は「流して」あげながら、意識の状態を一定に保った状態にする。あとはその状態を保ったまま運動していくことで、徐々に平気になったりするんですよね。

 ちなみにろうそくの火を1時間見るとかもやりましたけど、それはあんまり意味なかったですね(笑)。そういう意識の整理は、自然とできる人も結構多いとは思いますけど、世界の頂点の争いになってくると、肉体的・技術的だけではなくその辺の勝負にもなってくる。だからメンタルのトレーニングも大事になってくると思います。

小山 なんで漫画家を集中させてくれるトレーナーはいないんですかね。漫画家とか小説家専門のメンタルトレーナーって聞かないですよね? だからみんな自分でなんとかしていると思うんですけど、欲しいなぁ、そういう専門家(笑)。

 前編でそれぞれの口から語られたのは、いかにして2人が現在活躍するフィールドにたどり着いたのかという軌跡と、その着想の原点だ。

 後編(8月18日公開予定)では、お互いが挑む「これまでにないもの」を目指す挑戦と、今後の未来図について語ります。

室屋選手の「挑戦」を応援するLEXUSの特設サイトはこちら。

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