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<特別対談 前編>
室屋義秀(パイロット)×小山宙哉(漫画家)
「『ガンダム』と『スラムダンク』に憧れて」
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph byTadashi Shirasawa
posted2019/07/30 11:00
いまの飛行機だと、12Gとかかかる。
室屋 飛行機でも最初に飛びあがる瞬間って、やっぱり特別なんですよね。飛び上がるって、人間ができないことなので非常に特殊な感じがするというか。
小山 結構、Gもかかるんですよね?
室屋 いまの飛行機だと、12Gとかかかるんですよ。
小山 僕、取材でNASAに見学に行ったときに、体験マシーンみたいなものに乗せてもらったんです。もちろん一般人が体験できるレベルのものなんですけど、それで4Gとかだったかな。それでも腕とか全然上がらなくて、結構すごいなという感覚だったんですけど、12Gですか……。
室屋 ここまでくるともうハンマーでパカーンと叩かれる感じですね。0.4秒で12Gまで一気に加速するので。戦闘機とかだともう少し加速がゆっくりなので、余裕があると思うんですけどね。
小山 漫画の中で宇宙飛行士が訓練中に7Gでブラックアウト(※加重の影響で脳に血が回らなくなり、視界が暗転する症状)するという話を描きましたけど、12Gというのは初耳です(笑)。
室屋 もう心臓から全然血が上がってこなくなるんですよ。だから訓練もフライトも、そういう意味では苦しいっちゃ苦しいんです。でも、自分のやりたいことや目指す目標があって、それを達成できた時は喜びもその分大きくなる。それを味わうために頑張っているわけで、その辺は表裏一体なんでしょうね。漫画の世界も独特の苦労や楽しさがあると思います。
『宇宙兄弟』のアイディアが生まれる時。
小山 漫画の場合は体をつかうというよりは、想像の世界でのことなので、「面白いことが浮かんだら嬉しい」という感じです。読者に届けるよりも前に自分はその展開の面白さに気付けているわけで、「これからこれが読者に届けば面白いだろうな」と。そういうのでワクワクしたりという感じですかね。
室屋 『宇宙兄弟』という作品は人生観というか、すごく内容に哲学的な要素があるように思います。いつも「うーん」と唸りながら読んでいるんですけど、ああいう作中のアイディアはどんな時に出るものなんですか?
小山 それが分らないんですよね(笑)。「コレをしたらアイディアが浮かぶ」という決まったことがあれば必ずやるんですけど、それがないんですよ。本当にふと思い浮かんだりするので。ネームを描くときはカフェとか家の外でやるんですけど、出かけるために階段を下りているときに急に思いつくこともあります。長時間悩んだからできるというものでもないですし、難しいですね。