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スポンサーも新エースの虜に?
ロッテ岩下大輝の魅力は「素直さ」
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/03/24 08:00
2018年10月5日楽天戦でプロ初勝利を挙げた岩下大輝。今年は更なる飛躍が期待される。
「適当」ではない言葉と言動。
球場で彼に声をかければ、いつも笑顔が返って来た。
それはもしかしたら彼なりの強がりだったのかもしれないが、いつも精神のバランスを崩さないよう、記者に対しても気丈に振舞っている彼を見て、マウンドで孤独と戦うピッチャーとしての強さも感じた。
「自分は適当なんで」と彼は言うが、とんでもない。どこをどう見ても適当に生きているようには感じない。強いて言えば、不器用であるがゆえに「自分を適当」と言い聞かせているようにも思う。
そのことは彼を見てきた多くの者達が知っている。
だからこそ、プロ入りから4年目を迎えた昨年、ファームでも胸を張れるような数字も残していなかった彼に一軍昇格の声がかかったし、岩下社長のような期待をかける人達もいる。
慎重を期した昨年の一軍昇格。
昨年、一軍ピッチングコーチを担当していた清水直行(現二軍ピッチングコーチ)が当時を振り返りながらこう言う。
「昨年は(故障も癒えて)春のキャンプからだいぶ投げられるようになっていました。実際にブルペンではかなり質の良い球を投げていましたし、どこかで一軍には上げたいねと首脳陣の間でも話していました。
そのタイミングとして『ファームである程度、投げる回数をこなせたら』という条件があったんですけど、あれでも結構待った方だと僕は思っています。彼の場合、痛めた腰の状態もありましたから、気温が温かくなるのを待って、1度一軍で投げさせてみようと言う話になったと思うんです」
実際に、岩下に当時のことを訊いてみると、下半身のウエイトトレーニングは抑え気味だったという。まだ完全ではなかったというのが昨年の一軍デビュー時の内情だ。それでも首脳陣を納得させるだけのボールを試合で投げた。彼の奥底に眠る潜在能力の高さの証明と言っても良い。