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ビール瓶か、カラオケのリモコンか。~相撲界がこだわるポイントが、すでに社会からズレている~
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2017/12/12 07:00
引退会見の冒頭、頭を下げる日馬富士と涙を拭う伊勢ヶ浜親方。
横綱日馬富士を引退に追い込んだ幕内貴ノ岩への暴行事件で、当初、大きな焦点になっていたのが、凶器がビール瓶かどうかということだった。
「相撲界には伝統的にリンチがある」――元小結の龍虎(故人)が、こう証言をしたのは2007年に時津風部屋所属の17歳の力士が暴行死した事件の直後だった。
「我々の時代はリンチはビール瓶でやれ、と(言われた)」
「ここ(額)は強いんですよ。だからここを(ビール瓶で)パカーンとやっても大丈夫」
龍虎は土俵外の「かわいがり」の実態をこう語っている。その証言通りに、暴行死した時津風部屋の若手力士もビール瓶で殴打されていた。ビール瓶で殴ることは、相撲界の黒歴史の中では特別な意味がある。単純な暴力ではないことを意味するサインなのだ。